恋する365日〈QK・短編集〉 (ページ8)

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想いを伝えることさえ許されないというのは、かなり心に深いダメージを与えたようで、頬に何かが伝う感覚がして、今泣いてるんだなって客観的に感じた。

「っ、ごめん、泣かないで。Aきっと分かってないから、お願いだから自己完結しないで」

『、わたしのｯ、言葉を…、聞きたくなかったって、ことでしょ？！』

涙は止まることなく、溢れてきて、呼吸が乱れる。

「ああ、そうだけどそうじゃないから。俺から言いたかっただけだから」

ん？

「こんなふうに言うつもりじゃなかったんだけどなぁ(笑)」

拳にいは私の肩に手を置き、大きな深呼吸をする。

私もつられて深呼吸をする。

二度目の静けさにつつまれる。

「ずっと好きでした。幼なじみじゃなくて、彼女になってくれませんか？」

驚きで涙は引っ込んでしまって。

私の完全な片想いだと思ってた。

でもそれは違ってて…

拳にいの言葉を理解したら、違う意味の涙が溢れてきて。

『ううっ、……っ、』

「ああ、また泣いてる、ほら、おいで」

拳にいは両手を広げてて、私は躊躇うことなくそこに飛びこんだ。

小さい頃からそうだった。
私が泣いてると、抱きしめてくれて、落ち着くまで頭や背中をひたすら優しく撫でてくれる。

「泣きやんだ？」

『全然、泣き止んでないっ、』

「ほぼ普通に喋れてるし(笑)」

『いいのっ、もう、ちょっとだけこうしてたいの(笑)』

拳にいが抱きついていた私の手を剥がす。

真正面で向かい合う。

近くて目を合わせてるのが恥ずかしいけど、目線を外してしまうのはもったいなくて…

「返事は？」

『わ、私も大好きです…よ、よろしくお願いします』

拳にいは嬉しそうに笑っていて、私もつられて笑った。

『あっ、そういえば、同棲はやっぱりだめなの？もう、幼なじみだけじゃないでしょ？』

「んん、だめかな？好きだからこそ(笑)」

『ええ？』

「大切にしたいからね、順序っていうのは守りたい。いずれか、一緒に暮らすつもりだよ(笑)」

ああ、やっぱり拳にいは大人だ。
子供の私は、拳にいのその一言ですっごく舞い上がっちゃってる。

02
(ちなみにAの一人暮らしの物件は俺が候補だしたから)
(え、そうだったの？全然知らなかった)
(セキュリティと俺の家との距離で決めたから)
(た、たしかに、どの物件も拳にいの家とそんなに遠くなかった！！)