醜い少女 6 【ツイステ】【短編集】

・ ページ9

気付いたら、もう夜だった。保健室の窓から見える景色が暗闇の中に沈んでいる。


症状はもう何ともないくらいにまで治まっていて、もう帰れるだろう。そう判断して、私はゆっくりとベッドから降りる。


その際に、身体の上にかけていたエースくんの上着が落ちそうになったので慌てて抱き抱える。そのまま辺りを見渡すと、ベッド脇のテーブルにいくつか物が置かれていた。


何人かの人が、お見舞いに来てくれたらしい。……寝てて、全然気付けなかった。メモと共に置かれていたのはリラックス効果のあるアロマだったり、紅茶だったり。


全部を一人で持って帰るのは無理かなぁ、なんて思いつつそれらを全部抱えて保健室の扉を開けた。




「おや、起きましたか」


『クロウリーさん！……どうして？』


「Aさんを迎えに来たんですよ。……荷物は全部持ちました？」




扉の前の壁にもたれるようにして立っていたのは、クロウリーさんだった。保健室から出てきた私を見て、クロウリーさんがゆっくり笑う。


クロウリーさんの確認き、もう一度保健室を見直す。うん、大丈夫。




『はい！』


「そうですか。それでは、少し失礼しますよ」


『へ？……ひゃあ！？』




私の言葉に頷いて、クロウリーさんが少ししゃがむ。何かなと考える前に、私の身体が宙に浮いた。


落ちそうになって慌ててクロウリーさんの首に抱きつく。私がしっかり掴んだのを確認して、クロウリーさんは保険室の窓から飛び立った。


時間にして数分ほどの空中散歩は、私たちの寮の前で終わりを告げた。またやってみたいな……今度頼んでみよう。そんな考えを見透かしたように、クロウリーさんが「また今度、ですよ」と笑った。




「A、帰ったか」


『クルーウェルさん！……薬、ありがとうございました』


「気にするな。もう大丈夫そうか？」


『はい』


「なら良い。また何かあったら遠慮なく頼れ」




そう私の頭を撫でて、クルーウェルさんは自室へと消えた。


クロウリーさんも「では私もこれで。良い夢を」と、私の手の甲に口づけを一つ落として部屋へ戻っていく。……手慣れてるというか、なんと言うか……。なんだか気恥ずかしくなって、思わず頭を振る。


お風呂も入らなきゃとは思うけど、今日はもう身体が動かない。明日の朝に入ってしまおう。


部屋のドアを開けて、ベッドにダイブする。ふかふかのマットに沈めば、意識はすぐに消えてしまった。








慣れない痛みーー完ーー。

彼女の心が壊れた日→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す