その少女、怪我 ページ23
『……え、っと。……いってきます』
何だか照れ臭いな、と思いながら寮内に告げる。
今、寮にいるのはバルガスさんとクロウリーさん。それからルチウスさん。
三人(二人と一匹?)は、玄関にいる私に手を振って「いってらっしゃい」と笑顔を浮かべた。
『……よし』
三人に手を振り返して、私は学園へ向かう。
……本音を言うと、今すぐ逃げたい。寮に帰って、自分の部屋に引き篭もってたい。
でも、先生たちの顔を思い出すと勇気が湧いてくる。クロウリーさんだって言ってくれたから。
「私たちは、貴女の味方ですからね」
って。だから大丈夫。
私は前を向いて、歩いていく。数分もすれば、学園が見えてきた。
途中で居なくなったから、クラスメートには迷惑をかけたかもしれない。……もしかしたら、居なくなったことにさえ気付かれていないかも。
そんなことを考えながら教室に入ると。
『……?』
先に教室にいた何人かのクラスメートの視線が、私に突き刺さった。
……あぁ、この目はよく知っている。私が、十数年向けられていた視線だ。
……どうして、なんて。理由は痛いくらいに知っている。
またあの子なんでしょ。私があの子を醜いと言ったから、皆怒ってるの。
……本当に、羨ましい。あの子は醜かったからと言って殴られたことなんて、見世物のようにされたことなんて無いんでしょうね。
「……お前さぁ、転校したてだからって調子乗ってる?」
『……何のこと』
「とぼけんなよ。聞いたんだぜ?昨日、実験室前の廊下で監督生に言ってただろ。醜いってよ」
ほら、やっぱり。皆あの子が大事なのね。
私に近づいてきた、獣耳を生やした男の子が私の胸倉を掴む。……身体が持ち上がって、爪先が辛うじて床についている状態だ。
この状況はまずいなぁ、なんて。軽く考えていたら。
ばき、と鈍い音がして頰に痛みが走った。
その瞬間、私の身体は教室後方に吹っ飛んでいく。
『……ぇ』
身体がロッカーに当たったとき、私は自分が殴られたことを理解した。
頰は恐らく腫れているのだろう。ズキズキとした痛みが……これ、歯もやられちゃってるかもなぁ。
……でもまぁ良いか。すぐに治るし。
そう思った通り、数十秒後には私の身体は何事もなかったかのように戻っていた。
それに驚き、喜んだのは私を殴った奴らだ。
「こいつ、いくら殴ってもバレないんじゃね?」
「まじ天才」
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推しが尊い - 先生まじで優しすぎて泣く。好感度がバク上がりした (4月27日 0時) (レス) @page46 id: 653187292b (このIDを非表示/違反報告)
Akal(プロフ) - まだ途中までしか読んでないけど…マジで夢主ちゃんとキャラ達和解してほしい…!義家族許せないわ、これは。夢主ちゃん大体悪くないのに… (2023年3月29日 16時) (レス) @page25 id: 5bb5794148 (このIDを非表示/違反報告)
森。(プロフ) - 何度も読み返したくなり戻って来ました!何度読んでも涙が出てきて…これ程までハマった作品は初めてです!完結おめでとうございます! (2022年11月2日 7時) (レス) @page1 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
ロナ - イラつきます。 (2021年10月30日 13時) (レス) @page37 id: db59ef0184 (このIDを非表示/違反報告)
こうめ - えっ、小説で初めてガチ泣きしたんだが?!!好きです!! (2021年4月14日 0時) (レス) id: cfffb34543 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2020年9月18日 16時