un cuoco curioso① (ページ7)

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【中等部】06 ページ7

葉山とAはゼミを出てから一言も話す事無く温室に向かっている。

葉「(…なんも喋んねぇ。)」

少々気まずいと葉山は思いつつゼミが入った建物の出て直ぐ近くに建てられた温室の鍵を外した。

葉「ここだ。」
『…お邪魔します。』

扉を開けた葉山に促されてAは温室に入ると、温室の中はスパイスの香りで満ちていた。
市販で売っているスパイスがまだ枝についた状態や見た事ないスパイスをAは興味深く見ていた。

ふとAはスパイスで満ちた温室の中でカレーの匂いを嗅ぎ取り周囲を見渡すと、乾燥前のカレーリーフを見つけた。

『カレーリーフも栽培してるんだ。』

先程から無言だったAが唐突に口を開いた事に葉山は不意を突かれた様に驚き目を見開くが、冷静さを保ったままAに言い返す。

葉「温室でなら栽培出来るからな。つーかカレーリーフってよく分かったな。」
『…乾燥したカレーリーフなら使ったことあるから。』

会話が始まれば意外と話すのか、双方途切れ途切れながらも会話は進んでいった。
葉山はAにカレーによく使うスパイスや加工前のスパイスの説明をしていると、先程城一郎が言った事を思い出す。

葉「なぁ、嫌なら答えなくても良いが聞いて良いか？」
『…ん？』
葉「さっき親父さんが言ってた養子の事。」

大概の人は良い話でないと思い聞かないかデリカシー無く聞く人がいる。
葉山はどちらかと言うと興味本位ではあるが、お互い保護者との血縁がない共通点からダメ元で聞こうと考えていた。
気を悪くさせたかと不安に思う葉山だが、Aは意外そうな顔をしていた。

『父さんの養子になった経緯は覚えてないんだよね。』
葉「…は？覚えてない？」
『うん。でも、料理を教えてくれたお父さんは覚えてる。』

あっけらかんと、元の苗字も父以外の家族だった人達も忘れたとAが言うと、葉山が先程抱いていた不安は何処かへ行ってしまった。

葉「そんなあっさり…いやでも逆に良いのか。」
『私は父さんのとこに養子に出されて感謝してるくらいだから、良いんじゃない？』
葉「まぁ、才波がそういうなら…。」

良いかどうかは本人が決める事だしこれ以上言うのは止めようと葉山は口を閉ざす。

『…なんで養子の事、気になったの？』

Aは葉山が何故養子の事を聞いてきたのかが気になり葉山に問いかける。
葉山も別に言いたくないわけでもないので、自身の出自をAに話した。