un cuoco curioso① (ページ6)

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【中等部】05 ページ6

自身の苦い過去を晒され居心地が悪いAは不機嫌そうに城一郎を見上げる。

ふと汐見は城一郎が現れてから今まで立ちっぱなしで居た事に気付き慌てる。

汐「はっ！先輩もAちゃんも良かったらソファに座ってください！」
葉「俺お茶淹れてくる。」

Aは汐見に言われソファに腰を落ち着かせ、暫くして葉山から紅茶と茶菓子を受け取り4人で一息ついた。

城「汐見、お前嗅覚訓練って出来るか？」
汐「嗅覚訓練…？出来ない事も無いですが…。」
城「いくらスパイスを扱うなら、普通の嗅覚より多少優れてた方が良いだろ。なぁ、A。」

不意に尋ねられたAは静かに頷く。

『…嗅覚訓練って、一人でも出来ますか？』
葉「出来なくないが、本格的にやるなら無理だ。訓練する奴以外に匂いの元を持って来る奴が無いと意味がねぇ。」

嗅覚訓練において匂いの元を視認した上で行うのは意味が無いと葉山がいう。

汐「葉山君の言う通り、視覚情報が無い上で嗅ぎ分けるのが一番効率が良いよ。現に葉山君も目隠しして何のスパイスか匂いだけで判別出来るようにしてるよ。」
『…そうですか。』
城「ま！良い機会だし、汐見の所で色々試してみろ！」

汐見から承諾した事を聞いていないが、城一郎は既に任せる気であった。
流されてはいる汐見も既にやる気みたいなので問題ないであろう。

『これから宜しくお願いします。汐見さん。』
汐「宜しくね！Aちゃん！葉山君にもお友達が出来たし嬉しいな～！そうだ葉山君、スパイスを育ててる温室とかAちゃんに案内してあげて！」
葉「え…。まぁ、いいけど。」

汐見に言われ案内をする事になった葉山は立ち上がり、Aにこっちだと言いつつ温室に案内しようとする。
Aも葉山の言葉に腰を上げ葉山の後を追って行った。
ゼミ内に残った城一郎はほっと息をついた後汐見に向き直る。

城「…汐見、Aの事なんだが。」
汐「さっきAちゃんの事、養子って言ってましたよね？」
城「あぁ。恐らく後々知るとは思うが、Aの元の苗字は薙切だったんだ。」
汐「えぇっ!?じゃあ総帥の孫って事！？でもなんで…。」

まさかAの出自が己が務める遠月の関係者である事実に汐見は驚きを隠せないが、それ以上に何故城一郎の所に居るのか疑問であった。

城「ま、いずれじいさんから聞かされるさ。」

そう話を切り、近況など世間話をしながらA達の帰りを待った。