un cuoco curioso① (ページ44)

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【中等部】43 ページ44

葉山に担がれたまま調理室に戻ったAは椅子に下ろされ、溜息をついた。

『…疲れた。』
葉「まさか調理室に乗り込んで来るとは思わなかったな…。」
黒「……いい匂いがしたからって言ってたぞ…。」
タ「何というか、野性的だな…。」
ア「Aちゃーん！大丈夫!?」

竜胆が来る前に用があると言い調理室を離れていたアリスも戻りAの心配しながら頭を撫でている。
コンクール用の品の最終試作は終わった上、不本意だが竜胆が試食したお陰で反応は分かったので今日は早く帰ろうと片付けを始める。

校舎を出てそれぞれ帰宅する際に各々Aに良く休めと言い別れるとAは葉山と共にゼミ経由で極星寮に戻った。

翌日からは竜胆や司の姿を見かける事はあったが、竜胆がAに突撃する前に司が止めていた為なんとか回避していた。
本選メンバーとあって一回戦が近くなると姿を見かけなくなり、Aは安堵しながら葉山と昼食を摂る。

Aと葉山は再来年の為に本選一回戦と決勝だけ観戦し、勝者が決まると早々に会場を後にし次のコンクール話やスパイスの事を考える日々が続いた。

秋も終わりすっかり冬になった頃、Aはふとおでんが食べたいなと思った。
しかし一人分を作るのはコストが掛かる為、葉山を巻き込もうと考えたAはスマホを取り出し葉山に電話を掛ける。

葉《どうした？》
『おでん食べたい。』
葉《おでん？唐突だな。》
『買い物行ってからだけど、こっちで食べない？』
葉《俺は良いけど、寮の奴は？》
『最近は何も言ってこないから大丈夫。』

なら今から買い出し行くかと葉山が了承した為通話を終われせ、防寒具と貴重品、エコバッグを持ってAはゼミに向かい自転車を漕ぐ。

寮を出て数分掛けてAはゼミに付くと入口近くに葉山が待っていた。

『おはよう。』
葉「おはよ。なんでおでんなんだ？」
『さぁ？なんとなく。』
葉「さぁ？って…、とりあえず買い物行くか。」

葉山は傍らにあった自転車に乗りAと並走して近場のスーパーに向かい食材を買うと極星寮に戻る。

葉山が食材を持ちながら始めて来る極星寮のの外観に驚き立ち止まった。

『どうしたの？』
葉「いや…、本当に寮だよな？」
『あぁ…、私も最初ホラー映画のそれだと思った…。』
葉「しかもあの時って夕方だろ…。」

日中は良いとして夜にこの建物は見たくないと葉山は思いつつAの後を付いて行く。