un cuoco curioso① (ページ15)

今日:10 hit、昨日:74 hit、合計:27,221 hit

【中等部】14 ページ15

授業が始まる少し前に入って来た人物を見た生徒達は黄色い悲鳴や感嘆を漏らし教室をざわつかせた。
Aは見遣る事はなかったが、葉山は騒ぎの原因を一瞥すると神の舌で有名な薙切えりなの姿を確認した。
あの高飛車なタイプはAと絶対合わないだろうと思い、成るべく近付かない様にしようと考えた。

葉「(ﾎﾞｿｯ)A、多分というか絶対薙切と相性悪いだろうから気を付けろよ。」
『(ﾎﾞｿｯ)薙切…？』
葉「(ﾎﾞｿｯ)あれ、金髪の女。」

えりな派閥というものがある為葉山は小声でAに注意を促し、えりなの顔を知らないAに対して葉山は顎で指す。
促されたAはえりなを一瞥するが特に気にする様子は無かった。

『ふぅん。』
葉「お前…興味ないだろ…。」
『うん。でも気を付けるよ。』

そもそも興味がない事は分かった上で言ったが、顔さえ覚えれば関りを避けるだろうから良いかと葉山は思い、えりなに続いて入室した講師の授業が始まる為そちらに意識を向けた。

講師からこれから作るルセットと食材を渡され、2人ペアで調理する様指示される。
調理が開始され一番早く食材に手を付け下処理を行うのはAと葉山のペア、少し遅れてえりなと新戸のペアであった。
いくら授業で習ったとはいええりなはともかくAと葉山が先行すると思ってなかった生徒は、Aの下処理の速さに驚く。

葉「A。」
『OK。』

短いやり取りだけ行い葉山は次の下準備、Aは調理に入る。
現場仕込みの速さで調理するAに対し葉山も遅れはあるもののサポートに徹していた。

煮詰める工程に入り、葉山は一息つくがAは先程まで使っていた器具を洗い始める。

葉「ハァ…、マジで速いな。ギリギリだった…。」
『途中で調理が切れなかったから大丈夫だよ。後は慣れ。』

そう会話しつつ、Aが洗った器具を葉山が受け取り水気を取る作業を行う。

葉「慣れ、なぁ…。」
『頑張れー。』

器具を片付け、盛り付け用の皿を用意しAは先程から煮詰めていた鍋を確認した。

『ん、OK。』
葉「はいよ。」

Aからの合図で葉山は皿を手渡し、Aは盛り付けに入る。
付け合わせを添え完成した品を手に2人揃って講師の元へ差し出す。

講「ほう、一番乗りか。では………、ふむ、A判定だ！」
『お粗末様です。』
葉「ありがとうございます。」

講師からA判定を貰ったA達は、未だ調理中の生徒に見られながらそそくさと自分の調理台に戻って行く。