29話 ページ32
その後も、力強く踊れるようにトレーニングしていく。そのうちにレッスンの時間が終わってしまい、先生は帰っていった。
「ミヤねぇちょっといい？」
梓ちゃんに言われてみんなの元へ向かうと、沈んだ表情でみんなが座っていた。そのあまりにもひどい顔にハッとする。
「うちらね、ミヤねぇに迷惑かけとうなくてなんも言われへんかってん。ほんまは振りも辛いから変えて欲しいとこあったけど、1人で寝んと考えてくれた振りはうちらには作れへんし、かっこええ振りで好きやったから言えんくて。」
でも、ごめんしんどい。そう言っていつも笑顔な梓ちゃんがポロポロと涙を流しはじめたのを見て、心臓を握りつぶされたみたいだった。リーダーなのに、最年長なのに、私は彼女達の苦しみに気づけなかったのだと、まざまざと見せつけられたことが悔しかった。
『ごめん…。気づけなくてごめんね。皆のこと何も考えられてなかった。こんなんじゃ私リーダーやる資格ないね。ほんとにごめん。』
謝ることしかできずに顔を俯かせた。悔しくて泣きそうだったけど、でも泣きたいのは私が気遣えなかった皆だし、私は泣いて良い立場にいてはいけないと思ってひたすらに堪えた。
「Aねぇに謝らせたいわけじゃないんだ。リーダーはミヤねぇしかありえないから。ただ、Aねぇのカッコイイ振りが否定されて…。アタシたちも申し訳なくて…。ごめんAねぇ。」
『そんなこと…。』
「A姉様。私たちでも出来る振り、考えてくださいませんか？姉様の振りはかっこよくて素敵でしたのにこのまま否定されて終わりたくないです。踊りきれない私に腹が立っていますし悔しいですわ…！」
さっきまで沈み切っていた皆の顔は、闘志がメラメラと浮かび上がるようなやる気に満ちた顔になっていた。でも、瑠奈ちゃんだけはずっと沈んだままで。
「瑠奈からセンター変えた方が良いと思う。瑠奈じゃこのグループのセンターふさわしくないよ。皆の中で一番向いてない…。これじゃ勝てる実力があるみんなが勝てなくなっちゃう…！」
『そんなことない。そんなことないよ！私は瑠奈ちゃんを最後選んだ時ね、センター任せたいと思える子を基準に選んだの。瑠奈ちゃんがいいよ。』
「うちもね、ミヤねぇが瑠奈選んだ時、このグループのセンターは瑠奈やって思たで。瑠奈しかおらへん思た。やから頑張ろ？」
うん。そう言って頷いた瑠奈ちゃんは涙を溢しながらも力強い目をしていた。
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作者名：おおはら | 作成日時：2021年10月7日 14時
