恋風乱舞【ars M.A】 (ページ27)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:785,446 hit

27.ナツ・アソビ。ページ27

「あっちぃ...」

ミーンミーン、ジョワジョワ...

蝉の声がうるさい。
でも一週間しか生きれなくて必死で鳴いてるんだと思ったら、ムカつくなんて言えない。

「ガンバレ！一生を謳歌しろよ？」

窓の外の木にとまってるのであろう蝉にエールを贈る。

季節はもう夏休み目前。

夏と言えば、楽しいコトいっぱい！
もう、休みが始まる前からウキウキして来る。

俺は鼻唄を歌いながら、休み時間に『夏デート』って浮かれたタイトルが表紙にデカデカと書いてあるタウン情報誌を広げた。

海、山、高原、花火、祭、プールにバーベキュー

何から攻めよう！？ってその雑誌を机に置いて覗き込むように読みながら考えてると、フっと手元に影が出来た。

反射的に上を向くと、俺を見下ろす女の子。

「まー君、何見てるの？」
「あ、ナナ」
「あー、夏遊び特集？」
「夏デート特集！」

ニヒヒって笑うと、ナナも「あっそ！」って笑った。

ナナとは、専門学校に入って割と早く仲良くなった。

キッカケは、ナナの苗字が『正木』だったから。
俺が最初に『相葉雅紀です』って自己紹介した後、ナナから話し掛けて来た。

「ねぇ、雅紀って名前なの？私、苗字が正木なの！」って。

「ナナって名前は、私七月生まれだからなんだー」

ついでに名前の説明もされた。

それから、何となく気の合う奴らがナナを含めて6、7人。
学校ではよく一緒に居る、新しい友達。

あーそっか、出席番号が近いと仲良くなりやすいってのと、名前が同じだったら仲良くなりやすいってのは似てるかも。

そう思ったらAちゃんとたっ君が仲良いのって、別に気にする事無いか。
新学期にはよくある、普通のコトだな。

ナナが俺の隣に座って、勝手にページをペラペラ捲る。

パツンと切り揃えた前髪の下の睫毛が、パチパチ動く。

「夏は彼女といっぱいデートするの？」
「うーん、俺はしたいなーって思ってるんだけどねー」
「やっぱり海？」
「海は行きたいよね、テッパンでしょ？」
「女子的には海やプールに行くなら早めに予告して欲しいから、ちゃんと彼女に言ってあげなよ？」
「え？予告？」

何で？
俺と翔ちゃんなんて、朝会って「あ、今日って海日和じゃね？」「じゃね？」なんてノリでそのまま海パン持ってGO！って事もあるのに。

「女子には準備が色々あるんだから。まーくん、女心をもうちょっと勉強しなきゃ可愛い彼女に嫌われちゃうよ？」

ナナが呆れたように、溜息混じりで俺を見た。