恋風乱舞【ars M.A】 (ページ11)

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11.シタイ・コト。ページ11

結局、夕食はパスタを食べにカジュアルなイタリアンの店に行った。

前に「安いんだけど、美味いんだよ」って斗真さんが教えてくれた店。
俺も行ってみたいと思ってたし、Aちゃんに「パスタ食べたくない？」って訊いたら「食べたい！」って即答だったし。

だから、何も後ろめたくなんて無い！

......って、自分に言い聞かせてる時点で後ろめたいのかな。

何か、よく分からなくなって来た。
嘘なんて、つき慣れて無いんだもん。

デートの帰りにはAちゃんを送って、家の近くの公園で少しだけ喋るのがいつものお決まりって感じになってて。

ベンチに座って、話して

ほっぺにチューして、こっち向かせて

唇にキスをする。

外だって事もAちゃんちの近くだって事も忘れて夢中になりそうになるのを、自分の太もも抓って我慢する。

軽く触れただけの唇を離して、名残惜しいけど君の家まで送って

ちゃーんと、お母さんに送り届けましたってゆー意味も込めて挨拶して

俺は『好青年相葉くん』のまま、1人ぼっちの家に帰るんだ。

「さっみしー...」

ポカンと浮かぶお月さんに、思わず呟く。

お泊まりとかさー...
お泊まりとかさー...
お泊まりとかさー...
お泊まりとか、して欲しいじゃん。やっぱ。

色違いの歯ブラシとか、用意したいじゃん。
一緒にモーニングコーヒー飲みたいじゃん。

俺のＴシャツをパジャマ代わりに着て欲しいじゃん！！
あぁあぁ！おパンツ見えちゃうよ！？的な絶妙な長さでさぁ！！

だけど、Aちゃん外泊とかするタイプに思えない。
絶対その辺、俺と全然違うタイプだもん。

「さみしいー、もぅ、くそー」

もっかい独り言溢したら、猫がニャーッて応えた。

・

「おはよーございまーす」
「おはよ、雅紀くん」

週明け、学校終わりにバイトへ行くと斗真さんが相変わらずイケメンに俺を迎えてくれた。

サービス業の挨拶は、夜でも「おはようございます」
オープンは18時だから、その20分前には店に来るようにしてる。

レジ下に通学用のでっかい鞄を突っ込んで、サロンを腰に巻いてすぐにダスターを手にする。

カウンターを拭きながら、メニューの仕込みをしてる斗真さんに声を掛けた。

「斗真さんが教えてくれたイタリアン、行ってきました」
「あぁ、美味かったろ？」
「はいっ！すっげぇ好きな味でした！」
「デート？」
「フフッ、はい」

Aちゃんを思い出してムフッとなった俺を見て

斗真さんがフハッて笑った。