空想フランシール４th 【ars S.S】 (ページ3)

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108.CAKE。ページ3

部屋に入るとローテーブルいっぱいに色んな物が並べられてる。

「ダメですねぇ、デパ地下は。どれもこれも美味しそうに見えてあれこれ買っちゃいました」
「えー、楽しい―」

普段テーブルいっぱいに食べ物が並ぶなんて事無いから、それだけでテンション上がる。

「あ、そうだ。Aちゃん、これ」
「え？」

水平に保ちながら持って帰って来た紙袋をAちゃんの目の前に差し出す。

「えーっ！？ラトルメンタ！」
「クリスマスケーキ、買ってみました」
「でもこんな人気のお店のケーキ...簡単には買えないでしょ？」
「予約してたから」

ピースして笑ってみせると、Aちゃんは「嬉しい...」って少し目を潤ませた。

想像と違った。

きっと、めっちゃ笑顔になるんだろうと思ってた。

だけど、こんな表情も凄く嬉しくて、胸キュンで、愛おしい。

「中、見ても良いですか？」
「もちろん」

Aちゃんは紙袋を大事そうに抱えてキッチンに持って行き、中からケーキの入った箱を更に大事そうに出した。

俺も隣に並んで、Aちゃんが箱を開けるのを一緒に見る。

「開けますよ？」
「はい、どうぞ」
「ジャーン！」

ジャーンて。
そんな効果音、付けちゃうんだ。
おもしろ。

「わーっ！イチゴ！真っ赤！」
「ホント、真っ赤だな！」
「美味しそう！綺麗ー...ありがとう、櫻井さん。嬉しい！」
「どういたしまして。喜んで貰えて良かったよ」

ニコニコ、君はやっぱり嬉しそう。

ありがとう、ラトルメンタ。

「じゃあ、これはデザートのお楽しみ！」
「そうだね。まずはあの豪勢なご飯食べようか！」
「うん、そうしましょ。あ、スパークリングワインなんかも買っちゃったんですけど...自転車...」
「帰るつもり無いんだー...なんて言っても良いのかな？」

だから駅からここまで歩いて来ちゃった、と笑うとAちゃんもはにかむように首を傾げる。

「帰らせるつもりも無いんだー...なんて言っても良いですか？」
「...どんどん言って」
「櫻井さん、まずご飯です！」
「はぁい」

我慢できずに抱き着いた俺の背中をポンポンと叩きながら、彼女は子供に言い聞かせるように笑った。