空想カタルシス 2nd 【ars S.S】 (ページ32)

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67.ポテト。ページ32

「映画の前に、昼飯食べようか」
「そうですね」
「Aちゃん、何食べたい？」
「何でも良い...は、困りますよね。じゃあ...」

Aちゃんはキョロキョロと辺りを見回す。

「あれで！」

そう言いながら彼女が指差したのは某ハンバーガーショップ。

「あそこで良いの？」
「好きなんです、ポテトが」
「ハンバーガーじゃなくてポテトなんだ」

あそこのは細いでしょ？それが良いんですよ！と、楽しそうに話しながらAちゃんは俺を見る。

「ポテトが揚げ上がった音があるじゃないですか。ピロリッピロリッて。自分が注文する前にあれが聞こえたらテンション上がるんです！」
「あ、分かる気がする」

クスクス笑いながら、俺らは混んでる店内でどうにか狭い席を見付けてAちゃんに座っといて貰って俺が注文しに行った。

ファーストフードで昼飯食って、映画、って。

ホントに中学生の初デートみたいだな。

そう思いながらレジの列に並んで、チラッと席に座ってるAちゃんを見ると肘をついてボーッとしている。

周りの女子達は、連れがいてもスマホを弄ってたりするのに彼女は一人になってもそれを出さない。

何か、新鮮で。
そんな女の子もいるのか、なんて思って。
口元が緩む。

「はい、お待たせ」
「ありがとうございます！おいくらでしたか？」
「ハハッ、良いよ。これくらい」
「ダメですよ、払います！」

Aちゃんが鞄から財布を出す。

「んー、でもお釣りとか無いからさ。ここは俺が出しとくよ」
「...分かりました。じゃあ、映画の後でコーヒー飲みましょ！それは私に出させて下さいね」
「うん、そうして貰うよ」

熱々のポテトを食べながら、Aちゃんはヒヒッと笑う。

そして「あつっ！」と、口を大きく開いた。
そんなに口を開くなら、手で隠さなきゃ。
口の中、丸見えだよ。

目を閉じて「火傷したー...」って口の中を手でパタパタと扇いでるAちゃんは、子供みたいで。

俺はさ、大人っぽい家庭的な、そんな、そんな女の子が好きだったんだけど。
ファーストフードなんて、食べないような健康思考でさ。

けど、あんまり健康には良くなさそうなポテトを美味しそうに食ってる女の子も良いもんだな。