空想カタルシス 2nd 【ars S.S】 (ページ25)

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60.触れない。ページ25

恋愛って、理屈じゃなくね？

と、ニノが言う。

「あー！今、オレ、恋に堕ちた！とか、オレ今まで一回も思ったことねぇよ？気付いたら、あぁ、好きだわ...みたいな」

ソファに座ってちょっと前屈みになったニノが口を尖らせる。

「相葉さんは恋したなぁって自覚する時ってどんな時？」
「え？俺？」
「センセなんでしょ？教えてあげなよ」
「んー...触りたいって思った時かな」

それ、お前はいつでも誰にでもだろ。と、ニノが吐き捨てる。

「いや、違うよ！全然違うってわけでも無いけど、違うんだって！」

手をブンブンと振りながら雅紀が弁解する。

「あのね、触れたくなるの。見てるだけじゃ、足りなくて。喋ってるだけじゃ、足りなくて。全然足りなくて。手に触れたくなって、頬に触れたくなって...」
「で、乳も触りたくなるの？」
「違うよ！いや、違わないけど！...触れたいんだよ、好きな子には。でも...さわれないの」
「ンフフ、分かるよ。何となく」

眼鏡の二人が話すのを見ながら、俺はどうだろう...って考えた。

Aちゃんに触れたくなるか...って言うか、触れてしまって動揺した。
触れた場所が悪かったのかもしれないけど。

「理屈じゃないよ」

ニノは緩く笑う。

「頭でするんじゃないよ、恋愛は。ココロだよ。高校の時の恋愛とか、そんなゴチャゴチャ考えなかったろ？」
「まぁ...確かにな」
「それで良いでしょ」

ニノは眼鏡を取ってウーンと背筋を伸ばした。

「オレには教える事なんてやっぱ無いわ。ってかさ、思い出すって。その内」
「思い出す？」
「うん。あぁ、人を好きになるってこんなんだったなぁ...みたいなのをね」

そんなモンか？
そんなモンか。

「って言うかさ、相葉さんは翔ちゃんに何教えてあげるつもりだったの？」
「え？ハウトゥーABC」
「マジかよ。おもしれぇ、オレにも教えてよ」
「ニノには教えないよ。俺のABCは企業秘密です」

雅紀もいつの間にか眼鏡を外して、ネクタイも取って。

「翔ちゃん、オンナノコの抱き方だったらオレ、いつでも教えてあげるからね」
「あ、俺も！ABCね！」

何かどっちにも教えられたくないなぁ...。
コイツら、癖ありそうだもんなぁ...。

「それは...多分忘れてないから大丈夫」

俺がそう答えると二人は「翔ちゃんのえっち！」と、楽しそうに笑った。