空想カタルシス 2nd 【ars S.S】 (ページ16)

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51.リス。ページ16

高校の頃、アイツらとよく溜まってた公園。

駅から少し離れた場所にある、遊具は鉄棒しか無い小さい子は来ない公園。

そんな公園のベンチにAちゃんと並んで座る。

「懐かしいわ、ここ」
「よく来てたんですか？」
「高校の頃にね。学校、すぐそこだったから」
「あ、そっか。相葉くんと高校が一緒って言ってましたね」

Aちゃんは「何系のパンが好きですか？」とパンが入ってる紙袋を覗く。

「何でも良いよ、どのパンも旨いし」
「ですよね！ホントたまやのパンは美味しい！」

そう言って、俺にメロンパンをくれた。

「ありがと...あ、これ」

俺はさっき買ったコーヒーを一本、Aちゃんに渡す。
Aちゃんは、それを受け取ってペコッと頭を下げた。

「高校の頃、この公園で何してたんですか？」
「え？...何してたかなぁ…」

あの頃。
生徒会室でも顔合わせてたのに、帰りにもここで溜まってた。

俺とニノは予備校行くまでの時間潰し。
雅紀は家がすぐそこだから、いつも着替えてからジョギングがてら。
智くんはここでよくデッサンしてて。
潤は、追っ掛けの他校の女子から逃げてきて。

「あ、雅紀がその鉄棒でめっちゃ逆上がりしてた」
「あー、やりそう！」

クルクル回ってたよなー、雅紀。
俺はメロンパンかじりながら鉄棒を見た。

「俺とニノは参考書読んでたかなぁ…」
「賢い組ですね」
「アハハ！それ、雅紀に失礼だよ」

「あっ！ホントだ」と、Aちゃんは口を押さえて「相葉くんには内緒にしてくださいね」って笑う。

メロンパンが口の水分を吸い取っていく。
それをコーヒーで潤す。

Aちゃんがガブリと焼きそばパンをかじる。

「うまーい！」

女の子は「美味しい」って言わなきゃ。
それに、そんな大きな口開けちゃって。
口の端っこに青のり付いてるけど。
頬張りすぎてほっぺた真ん丸だし。

「櫻井さんも一口どうですか？」
「へっ？！」

口に物が入ってるからモゴモゴしながらAちゃんが食べかけの焼きそばパンを俺に差し出す。

俺は何となく勢いで受け取っちゃったけど、食べるのを躊躇しながらAちゃんを見たら「美味しいですよ」って膨れたほっぺで。

リスみたい。

焼きそばパンを一口かじって、あぁ間接キスだわ、なんて思っちゃった俺。

思春期か。