10.仕事。 ページ10
「ちょっと！これ、卵入ってない！オスだ！」
雅紀がししゃもをかじりなら不満そうに言う。
「卵持ってるなら、メニューにちゃんと子持ちししゃもって書くだろ？そー書いてないってコトはオスが出てきて当然」
ニノの言葉に雅紀が慌ててメニューを開く。
「...ホントだ...ししゃも、って書いてる...子持ちじゃない」
「だろ？」
俺の隣では潤がその隣にいる智くんにビールを注いでいた。
「なぁ、潤」
「何？あ、翔さんもビールおかわり？」
潤が持ってる瓶ビールを軽く傾ける。
「ううん、明日も仕事だし今日はもうやめとく」
「そうか。じゃあ、何？」
「あのさ、雅紀って生徒会で何してたの？」
「え？生徒会長」
俺らが卒業した後、雅紀が生徒会長になった。
明るくお祭騒ぎ大好きな雅紀が会長になると、学校全体の雰囲気が変わったと聞いた。
「あ、そうじゃなくて俺達がまだいた時」
「あぁ！宴会部長でしょ？」
「そんな役職、無いだろ」
隣の隣で智くんが俺と潤の話を聞きながらフフッと笑う。
「相葉くんは議長だったはずだよ」
「議長？議長って会議とかを仕切る、議長？」
「うん、そう。議長」
アイツ、そんな事してなかったぞ？
よく発言はしてたけど、仕切ってはない。
むしろ、好き勝手に自由発言するから会議がしっちゃかめっちゃかになったりしてたぞ。
「翔さんが全部やってたもんね、会議の仕切り」
「あ...あれ、俺の仕事じゃなかったんだ...」
また智くんがフフッと笑った。
「相葉さん、ホント仕事しなかったですよねぇ…」
いつから俺らの話を聞いてたのか、ニノが雅紀を見ながらボソッと言う。
「してただろ！宴会部長、チョー頑張ってただろ！」
「だから、そんな役職ねぇって言ってんの」
「お前、生意気！後輩のくせに生意気！」
雅紀がニノにししゃもの頭を投げつけた。
ニノがそれを投げ返す。
それを見た潤が「食べ物粗末にすんなよ！」と怒って、二人は揃って「ごめんなさい」と頭を下げた。
俺らはあの頃と変わらず平和だ。
ちょっと大人になって。
ちょっと世間を知って。
ちょっとだけ、人生の厳しさを経験した。
それだけだ。
俺らは相変わらず、馬鹿で平和だ。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2013年9月5日 19時
