空想カタルシス【ars S.S】 (ページ9)

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9.宴会部長。ページ9

スポーツ推薦で入学した雅紀は生徒会より部活を優先していたが、文化祭や体育祭が近付くと部活の途中でも生徒会室にやって来た。

ジャージのままだったり、時にはバスケのユニフォームの上に学ランだけを羽織った奇天烈な姿で会議に張り切って参加した。

「俺、去年の文化祭つまんなすぎてショックだったんです！だから、俺が楽しくしてやろうと思って！」

初めて生徒会室に来た時、雅紀は俺達に高らかと初心表明をした。

教師からの推薦のみの生徒会だが、たまに教師に「生徒会に入りたい」と立候補する生徒もいるらしい。
ただ、それは大体あれだ。

打算的な奴らだ。

だけど雅紀は「俺がこの学校を楽しくしたいんです！」と教師に頼み込んだらしい。
教師側も雅紀なら本当に学校を変えるかもしれないと、彼を生徒会に推薦した。

文化祭について会議をしてた時。

「生徒会でも何かやっちゃおうよ！」

雅紀の提案にニノが「何したいの？お金には限りがありますからね」と呟く。

「そうだ！歌って踊ろうよ！」

我ながらナイスアイデア！と笑う雅紀に正直、コイツは何言ってんの？と思った。
皆、反対すると思ってた。

だけどニノは「それならお金かかんないな」と笑った。

「楽しそうですね！ね、カイチョー」
「おれ、踊れるかなー！」

潤と智くんも目をキラキラさせちゃって。

「じゃあ決まりー！」

副会長である俺の意見は聞いて貰えず、その年の文化祭で俺達はSMAPになっていた。

キムタク役の潤が「ゲッチュ！」すると、女子生徒がギャーッ！と黄色い声を上げる。

その女子の盛り上がりを見たニノが「くそ、ただでアイドル松潤見せてしまった！チケット売れば良かった！」と悔しがった。

そして、踊れるかな？なんて言ってた智くんだけど「何でそんなに踊れるの？」と聞きたくなる位で、おまけに歌まで上手かった。
神様は智くんに何物与えるつもりなんだ。

俺はというと、振りが全然覚えられず雅紀と居残って毎日遅くまで踊ってたせいで暫くは体がバッキバキだった。

何もしない生徒会長と、生意気な下級生３人に振り回される日々。

コイツらがいなければ絶対にあり得なかった『青春』ってやつを俺は一年だけだけど満喫した。

あれ？

そう言えば雅紀って生徒会での役職は何だったんだ？
自分では「宴会部長」なんて言ってたけど...サラリーマンじゃあるまいし。

俺は目の前でししゃもをかじってる大人になった雅紀を見た。