空想カタルシス【ars S.S】 (ページ8)

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8.役割。ページ8

会計のニノは、横領でもしかねない表情で生徒会の運営費を見直しては頷き、眉をひそめ、また頷きニヤつく。

「凄い無駄がありますね。これ、削れば文化祭とか結構豪華に演出できますよ？」

電卓を叩いて出た金額を俺に見せながら、ニヤリと笑って頬杖をつく。

ニノの会計は完璧で主婦だったら素晴らしいやりくり上手になれるだろう。

「ニノは理数系進学希望？」

俺が尋ねると「文系ですよ」と、薄く笑った。

書記の潤は毎日、花束を持って生徒会室にやって来た。

実家の花屋で廃棄される前の花を、生徒会室に飾るのが潤の日課。

「一度も愛でられる事無く廃棄されるなんて、コイツらが可哀想ですから」

潤はそう言って、自宅から持ってきた花瓶に花を生けた。

お陰でいつも部屋は花の香りがして、智くんは今まで以上に「この部屋は気持ちが良いね」と言うようになった。

ただ、こんな美形が毎朝花束を抱えて登校する姿は女子生徒の間で話題になってしまい、生徒会室の前に人だかりが出来ることも珍しくなくて俺らはちょっとウンザリしてた。

「アイドルかよ」

ある日、ニノがシラッと呟いたかと思うとガラッと部屋のドアを開きそこに集まってた女子達に可愛い顔でニヤリと笑って「これ以上無断で潤くん見るなら、金、取るよ？」と吐いた。

それ以来、部屋の前に女子は溜まらなくなり同時に「二宮和也は友達で商売する鬼畜」という噂が生まれた。

「当たり前だろ、潤くんみたいな美少年をただで拝めるなんて思うなや。図々しい」

そんな噂にも動じず毒を吐くニノは、女子から『天使の顔をした悪魔』とも呼ばれてるが...本人は割りとそれを気に入っていた。

人を集めてた当事者の潤は、今日も鼻唄を歌いながら花を生けていた。
それを智くんが隣で眺めて「綺麗だね」と微笑む。

「あー！可愛いね！」

生徒会室の扉を開いた雅紀が、その花を見て笑う。

「相葉さん、汗臭いですよ」
「うっさいなぁ、ニノは。青春の汗だろ！」

明らかに、去年までのこの部屋とは違った。

悪くない。
高三の俺の毎日は、悪くない。

むしろ、日に日に、俺はこの部屋に来るのが楽しみになってた。