空想カタルシス【ars S.S】 (ページ35)

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35.捜索。ページ35

ゴロゴロしてた雅紀が「ニノ、ジョシコーセーと合コンさせろとか言ってたよ」と無邪気に笑いながら、ソファを降りてテレビ台の前にしゃがんだ。

「ニノ、そんな若い子が好きだっけ？」
「ううんー、そこに拘りは無いはず。虐めて辱しめていたぶれるなら、それで良いんだと思うけど」
「...それはそれでロリコンより質が悪いな…」

女好きだけど明るくて優しい雅紀と、ドＳだけど綺麗で頭が良いニノと一緒に合コンって...益々、俺って平凡過ぎて何の印象にも残らないだろう。

「ところで、お前何してんの？」

勝手にテレビ台の引き出しをゴソゴソしてる雅紀の背後に立って問う。

「翔ちゃん、どこに隠してんの？」
「何をだよ」
「男の夢が詰まったDVDだよー。団地妻！」
「団地妻なんか観ねぇよ！」

俺は雅紀の頭パコンと叩いてソファに座った。

「いってー...えー、翔ちゃんも大人の女よりジョシコーセーが良いの？」
「何でそーなるんだよ、お前の頭ん中一年中お花畑だな」
「よく向日葵みたいだねって言われます！」

DVD捜索をやめた雅紀が、自分の鞄を肩に掛けて立ち上がった。

「俺、この後予定あるんだ」
「あ、そうなの」

どうせ女の子との予定なんだろう。
本当に桃色だな、コイツは。

「じゃ、合コンについてはまた連絡するからね！」
「...はいはい」
「ちゃーんと、心の準備と体の準備しといてね！」

もう、何も言い返す気にもならない。
桃色雅紀は「じゃあね！」と笑って玄関に行くと「あーっ！ブーツめんどくせっ！」と叫んだ。

一応、お客さんだから俺も玄関まで見送りに出たら、しゃがんで靴紐を結んでた雅紀が顔を上に向けて俺を見る。

「翔ちゃんに、また恋してほしいんだ」

目をキュッと細めて雅紀は笑う。
その言葉に、心が揺らぐ。

雅紀は雅紀なりに、俺のことを考えてくれてるんだ。
三十路も過ぎて、女の影を見せない俺を。
未だに、五年前の失恋を引き摺ってる俺を。

「翔ちゃんがチェリーボーイだなんて勿体無い！」
「違うって言ってんだろ！」
「いーっ！痛い！潰れる！苦しい！潰れるよーっ！」

やっぱり、コイツはサイテーだな。

しゃがんでる雅紀の背中を、俺は足で踏みつけた。