空想カタルシス【ars S.S】 (ページ32)

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32.成功。ページ32

何かお腹膨れた、と雅紀が眉をしかめる。

そりゃそうだろ、そんな一気に二杯も炭酸飲んだんだから。

「なぁ、雅紀。彼女のこと、どっかで見たことある気がしてたんだろ？それは解決したの？」
「あー！それそれ！うん、解決した！」

「近くで見たらすぐに分かった！」と、手をパチンと叩く。

「中学の頃の同級生だった」
「あ、そうなの？」
「うん。だから『相葉なんだけど覚えてる？』って声かけたの」

そうなのか。
あ、だから、彼女もすぐに笑ったのか。

同級生だって気付いたからナンパじゃなくて、ただの再会になったみたいだけど、同級生じゃなかったら…やっぱりあれって。

「近くで見たから気付いたんだろ？じゃあ、最初はどんなつもりであっちのホーム行ったの？」
「ナンパ！翔ちゃんもナンパ成功した？って言ったじゃん」

だよな、思った通りだ。
雅紀はやっぱり朝っぱらからナンパできちゃう男だった。

「何てね、違うよ？近くで確かめたかっただけ！」
「え？」
「Aちゃんかなぁ…とは思ったんだけど、中学の頃と雰囲気が全然違ったから自信無くて。だから、あっちのホームまで確かめに行ったの」
「...あぁ、そう」

すまん、雅紀。
俺はお前を盛りのついた犬のようだと思ったよ。
女の子好きでも、そこまでじゃないよな。
ごめんごめん。

「いくら俺でも朝っぱらからナンパなんかしないからね！」
「...そんなふうには思ってないって...」

今さっきまで思ってたけど。

「朝、ナンパしたってお持ち帰りできないもん」

前言撤回。
お前はやっぱり盛りのついた犬だ。

「翔ちゃん、Aちゃん気になる？」
「はぁっ？！何だよ、それ」
「Aちゃん、俺けっこー良いと思うんだよね。翔ちゃんに」
「何言ってんの...」

ただ、毎朝姿を見てただけの娘が気になるなんて、そんな事ありえない。

「出会いなんて、ドラマみたいに劇的な事は起こらないからね！」

雅紀はククッと笑う。

嫌な予感しかしない。

「だから、俺が全然ドラマチックじゃない現実的な出会いの場を翔ちゃんにプレゼントするよ」

嫌な予感がムクムク膨らむ。

「合コンのお誘いしたから！ナンパ大成功！俺もおこぼれ貰っちゃう！」

サイテーだ...。
爽やかに万歳する雅紀の横で、俺は深い溜め息を吐き出した。