空想カタルシス【ars S.S】 (ページ31)

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31.柔軟剤。ページ31

「翔ちゃん、柔軟剤何使ってんの？」
「ダウニー...」
「定番！さすが翔ちゃん！」
「悪いかよ。じゃあ、お前、何使ってるんだよ」

雅紀は一気に飲み終わったコーラのグラスをキッチンに持って行きながら「ファーファ」と気の抜けた声を出した。

「ファ...あぁ、白熊のやつ？」
「そう、熊さん！あれのドバイ」

空になったグラスに雅紀は勝手にコーラのおかわりを注ぎながら、自分の服の袖を匂って「いー匂いだよ」と笑う。

「で？お前、ナンパは成功したの？」

白熊さんの柔軟剤の話なんてどーだって良い。

いや、別に彼女の事が気になる訳じゃない。

単に朝っぱらからでもナンパって成功するもんなのか気になってるだけだ。

「あらら？翔ちゃん、気になっちゃう感じ？」

勝手に入れたコーラを飲みながらまたソファの下に座った雅紀が、俺の膝をツンとつつく。

「...何にやけてんの、お前」
「にやけてないよー、元々こんな顔だよ？」

ニィーッと笑うと、雅紀は俺の隣に移動してきた。

「ナンパね、成功したよ」
「えっ？！」

自分で聞いたのにあれだけども、そもそもナンパの成功ってどーなったら成功な訳？
電話番号ゲット？
デートの約束？

それともお持ち帰り？！...それは朝だったから無理か。

「Aちゃん、俺と同い年なの」
「Aちゃん...」
「OLさんなんだって。あ、独身ね！」
「あっ、そう」

雅紀がワンピースの彼女...Aちゃんっていうらしいあの娘の事を話す。

「あれ、何聴いてたと思う？」
「あぁ、毎朝何か聴いてるよな。クラッシック...はさすがに無いか...じゃあ、aikoとかかなぁ」

可愛い女の子はaikoを聴いてるって、聞いたことがある。
カラオケでaiko歌う女の子はモテるとか。

「ハイスタ」
「ハイスタ？...ハイスタってあのハイスタ？」
「そう、パンクのハイスタンダードね」

俺も高校の頃とか好きでよく聴いてた。
ライヴで思いっきりダイブとかするよな？

「あの娘、やっぱ翔ちゃんが思ってたような大人しめの女の子では無かったよ」

雅紀は相変わらずにやけながら、またコーラを飲み干した。