空想カタルシス【ars S.S】 (ページ25)

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25.買い出し。ページ25

俺が開けたままテーブルに置いてたビールを見付けた雅紀が「飲んでたの？」と、缶を持ち上げた。

「あれ？全然減ってない」
「飲もうとしたらお前らが来たんだよ」

ふとキッチンを見ると、智くんが勝手に冷蔵庫開いて「高級ビールいっぱいある！」と叫んだ。
智くんの後ろから冷蔵庫を覗いてた潤が「何かつまみ作ろか」と腕捲りをした。

「おい、お前ら明日仕事じゃないの？もう、夜中だよ？電車も無いよ？」

俺は、勝手に飲み会を再開しようとしてる四人に慌てて聞いた。
飲み会の準備でもしてるのか、キッチンで甲斐甲斐しく動く三人とは対照的にソファに座ってるだけのニノが「ねぇ翔ちゃん」と笑う。

「酒、足りないよね。一緒に買いに行こうよ」
「本気で...？」
「オレはいつでも本気ですよ。本気と書いて、マジと読む」

ニノはソファから立ち上がって「酒、買ってくるー」と俺の腕を引っ張ってった。

玄関を出る時に、部屋の奥から「いってらつしゃーい！」と、雅紀の声が聞こえた。

暑いな…。

夜中でも、まだ暑い夏の夜道。

また俺のこめかみを、汗が流れる。
隣でふわふわと歩くニノは、涼しい顔してて暑くないのかなぁ…と思う。

「あっちぃ」
「えっ？！」
「え？何？翔ちゃん、暑くないの？」

俺、サトラレなのかな。
それとも、無意識に声に出てたのかな。

「翔ちゃん、あのオンナと別れたの？」
「へっ？！」

ニノの突然の言葉に俺は夜中だと言うのに大声を出してしまった。

「...まぁ、彼女は前から別れたかったみたいだから」
「そうなの？」
「俺、つまんないんだって」

自分で言って虚しくなるわ。

「何だよ、それ。ホントにクソオンナだな」

綺麗な顔して、口が悪いな。本当。

「翔ちゃんのどこがつまんないんだよ。すげぇ面白いだろ」

フンッと顎を上げるニノに「どこがだよ」と言うと「面白いよ」と口角を上げた。

「こんなに虐め甲斐がある人、いないよ。ちょー面白い」
「お前、本当に鬼畜だな…」

ンフフと笑うニノは、天使の笑顔。

言ってる事は悪魔だけどな。