空想カタルシス【ars S.S】 (ページ23)

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23.納得。ページ23

ショック、と言うより「あぁ、そうなんだ」と思った。

やっぱり俺はつまらない人間なんだ、と。

そりゃニノの方が良い男だよ、と。

妙に納得したんだ。
俺だって、自分が女だったらニノの方が良い。

明るい雅紀の方が良い。
優しい潤の方が良い。
才能ある智くんの方が良い。

俺だって、俺を選ばない。

「そりゃ...そうだよな」

ククッと渇いた笑いが込み上げてきた。
そんな俺を、彼女はチラッと見て「ごめんね」と言う。

何が？

何に謝ったの？

ニノに色目使ったこと？

それとも、好きでもないのに俺と付き合ってたこと？

それとも、俺をつまんないって言ったこと？

「携帯、貸して」
「え？」
「お前の携帯、ちょっと貸して」
「何で...ちょっと、翔！」

俺は彼女の手の中にある携帯を半ば無理矢理取り上げた。

「何する気？！もう私と翔は関係無いんだから返してよ！」

ヒステリックな声が駅前に響く。

別れ話はまだのはずなのに、彼女の中ではもう終わってるんだな。

「そうだよ。関係無い」

俺は、彼女の携帯を操作して自分のアドレスを開いて彼女に見せる。

「もう、関係無い」

そう言いながら、彼女の目の前で俺のデータを消去した。

そして、自分の携帯を出して彼女のデータもその場で消去する。

「これで、終わり」

彼女は、初めて俺に泣きそうな顔を見せた。

何で泣くの？
別れたかったんでしょ？
他の男の方が良いって思ったんでしょ？

「じゃあね、今までありがと」
「え...翔...」
「あ、あと、俺がつまんない奴だって教えてくれてありがと」

俺は、それだけ言って彼女の隣から立ち上がった。

暑い暑い夏の夜、俺は、一人で夜道を歩きながらちょっと笑った。

やっぱ、俺はつまんないんだ。
こんな俺と、誰も恋愛なんかしたくないんだろうな。

背中を汗がツーッ...と流れた。