空想カタルシス【ars S.S】 (ページ3)

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3.一流。ページ3

「雅紀は爽やかなのに、えろいってのが残念だよな」
「えー、ギャップで萌えるでしょ？」
「いえ、残念ながら萌えないです」
「翔ちゃんみたいなムッツリより良いと思うけどな」

ちょっと赤くなってる口元をさすりながら、雅紀はニヤっと笑う。

ってか、誰がムッツリだ。こら。

俺はニヤけた雅紀から目を逸らし、向かい側のホームに目をやった。

あっち側も無彩色軍団が並ぶ。

そこに一人、真っ白のワンピースを着た女の子がいた。
俺の隣の極彩色男とはまた別の意味でちょっと浮いてる。

「なぁ、白って無彩色なのに派手だよな...」
「何？急に」
「あれ。ほら、目の前の。すっごい、目立つな」
「あぁ、白いワンピース？確かに目立つね」

コソコソと雅紀に話す。
雅紀は、その白いワンピース女子を眺めながらニコニコと話す。

「でも白は俺、派手な色だと思ってるよ」
「清楚で清純な色じゃなくて？」
「翔ちゃんはそう思うだろうね」

フフッと雅紀が笑うと同時にホームに電車が入って来た。

電車には驚いた事に空席がある。

「座れる！」
「何、翔ちゃん知らないの？普通電車しか停まんないから、朝だと結構空いてんの」
「だって俺、こんな田舎電車乗らないから」
「田舎って！同じ町でしょ！」

雅紀はまだ眠そうな目をゴシゴシと擦りながら笑う。

「翔ちゃん、出勤早いね。俺は今日ミーティングあるからいつもより早いんだけど...」
「そうか？普通だろ」
「翔ちゃんとこみたいな一流企業でも？」
「...どこも一緒だよ」

『一流』と言われる会社に勤めている。
『一流』と言われる大学に通っていた。

だけど一流なのは、その『箱』だ。
俺が入ってる箱が一流なだけで、俺が一流な訳じゃない。

これを言われ度に、自分の中の何かがキシっと音を立てる。

電車が走り出す直前。
あっち側のホームを何気なく見ると、さっきの白いワンピースがふわりと風で揺れた。