空想カタルシス【ars S.S】 (ページ13)

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13.花屋さん。ページ13

飲み直す組の３人と店の前で別れて、俺は潤と駅に向かって歩いた。

「なるほどねー、それで翔さん俺らと同じ電車使って来たんだ」

歩きながら、今日何で俺が普段と違う電車だったのかを潤に説明した。
潤の花屋は、雅紀が使う駅のもう三個向こうの駅の近くにある。

「たまやのパンかぁ…懐かしいな。俺も高校の頃はよく食った！」
「たまやのばあちゃん、潤のことお気に入りだったよな」
「よくオマケしてくれてたよ、フフッ」

花束を抱えて店に入ってくる学ランの美少年はばあちゃんから見てもそれはそれは可愛かったんだろう。

ふと、潤の手を見ると綺麗な細い指に小さな傷がたくさん付いてる。

「痛そうだな、指」
「あぁ、これ？もう慣れたよ。最初は痛くていちいち絆創膏貼ったりしてたけど、キリが無いしね」

花屋は表向きの華やかさとは逆に重労働だと聞く。
花のトゲで怪我するのなんて、日常茶飯事らしい。

「綺麗な花ほど、俺を傷付けんの。気高いんだよね」

...何だ！その台詞は！
お前が言うと意味が全然違って聞こえる！

「翔さん？」
「あ、いや、...潤は花が好きなんだな」
「好きだよ。ガキの頃から花に囲まれてたから生活の一部」

好きなことを仕事にできるって…どんな感じなんだろうな…。

そう言えば飲み直し組のあの３人の仕事も、アイツらの好きなことだ。

「あーでも、ホント楽しいわ！あの人達と遊ぶと！」

潤がニコリと笑う。

「すっげぇ、刺激になるんだよね。あんなバカばっか言ってるけどあの人達、大人の男として超魅力的でしょ？」

まぁ確かに。

バカだという事は否定しない。

けどそれと同時に、地に足が付いてると言うか、昔からブレてない。

「翔さんも、俺にとって自慢の先輩だかんね」
「はっ？！俺が？！」

また潤はニコリと微笑んで、改札に切符をスルリと入れた。

俺はその後を追うように、ICカードをタッチした。