空想カタルシス【ars S.S】 (ページ12)

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12.サイテー。ページ12

色っぽい文庫本を「これは間に合ってます...」とニノの前にスッと戻すと、また楽しそうにクスクス笑う。

「あっ！じゃあニノ、その本俺にちょーだいよ！」
「相葉さん、本なんて読むの？」
「失礼な！漫画とカンノーショーセツは読むよ！」
「...終わってんな」

終わってねぇよ！とニノを睨みながらも、雅紀はその本を自分の鞄に突っ込んだ。
それと同時に「あっ！！」と叫ぶ。

「明日の朝までに返さなきゃいけないんだった...明日休みだしニノんちに泊まるつもりなのに...」

鞄の中からレンタルビデオ屋の袋を取り出しながら、肩を落とす。

「延滞金くらい払えば良いだろ」
「ケチなニノから出てくる言葉とは思えないよ！あー、どうしよ...あっ！翔ちゃん！」

雅紀がキラキラした笑顔で俺を見る。
今までの経験上、こういう時は面倒なことが起きる。

「ねぇ翔ちゃん、お願いがあるんだけど...」

分かってるよ、俺が今からお前に何を頼まれるか位な。
雅紀が手にしてる袋のビデオ屋は、今日俺がたまやに寄る為にわざわざ自転車で行ったあの駅の目の前にある。

「それ、返しとけって言うんだろ？」
「さすが翔ちゃん！話が早いね」
「まだ良いとは言ってな...」

俺が言い終わる前に雅紀はその袋を俺の前に置いた。

「明日の朝までで大丈夫だから、翔ちゃん今日持って帰って観ても良いよ？」
「えー…面倒だから帰りに返却ポストに放り込んどくよ」
「いいの？なかなか良かったよ、それ」

そんな良いのか？
何の映画だ？

俺がDVDが入ってる袋を覗き込んだら「良いよー、女優がえっちぃ顔してるんだ。声も良かったよ！」と雅紀は爽やかに笑う。

「団地妻、翔ちゃん好きじゃない？人妻って良いよねぇ、ワルイコトしてる感じがたまんない」
「うっわー、相葉さん、まだそんなの借りてんの？オンナノコは虐めてナンボでしょ。辱しめてナンボでしょ」
「ニノ、鬼畜だなぁ。俺はベッドに薔薇を敷き詰めてあげて、お姫様扱いしてやるよ」
「さすがジェントルマンだね、潤くんは。おれは可愛い下着着させて眺めてたい。恥ずかしがってる姿を描きたい」

サイテーな会話の中に、やっぱり王子様が一人居た気がする。

俺は四人を無視して、その団地妻を鞄に入れて席を立った。