楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ8)

今日:14 hit、昨日:13 hit、合計:872,312 hit

8.お客様。ページ8

翔ちゃんは彼女とラッブラブで

潤くんは幼馴染と一生に一度の恋をしてて

ニノは...そう言えばどんな恋愛してんだろ。
モテモテだからなぁ。
ヨリドリミドリってやつなんだろうなぁ。

曲がった性癖持ってるけど...。

あ...それ以上におーちゃんが気になる。
高校の頃からの長い付き合いだけど、おーちゃんと恋愛が結びつかない。

平日の真ん中で暇だった仕事帰り、そんな事を考えながらあんまり疲れてない身体で地元に帰り着く。

「今度おーちゃん飲みに誘おうかな」

おーちゃんの『恋愛観』ってやつ？
聞いてみたい。

コンビニの前を通りかかった時に、ポケットを探って煙草を出すと、後二本。

「買っとくか」

店内に入って、そのままレジに直行して俯いたまんま声を出そうとした瞬間に俺の目の前に出される煙草。

いつも俺が吸ってるヤツ。

「え？」
「煙草...こちらですよね？」
「え...はい」

顔を上げると、あの店員さん。
薄く口角を上げて、小首を傾げる。

「覚えて...くれたの？」
「よくいらっしゃるお客様は覚えますね」
「へぇ、凄いね！俺も接客業だから見習わなきゃ」

店員さんはそれ以上は何も言わずに、会計をする。

「440円です」
「はーい...500円でお願いします」
「60円お返しです」

また、少し触れる手。

「ありがとうございます。またご来店くださいませ」
「ありがとー」

ペコリと頭を下げる店員さんに俺も小さく頭を下げて、店を出た。

出たトコに灰皿がある。

「一本吸ってかーえろ」

歩き煙草や、チャリ乗りながら煙草はあり得ない。
俺、常識人だから。
立派な大人だから。

...とか言ってたら、ニノに何言われるか分かんないな。

すぅっと肺まで煙を吸い込んで、ちょっと上向いて空へ吐き出す。

スマホ片手に煙草吸ってると、さっきの店員さんが外のゴミを集めに店内から出て来た。

「あ...ごめんなさい、俺、邪魔？」
「大丈夫です。灰皿は後で掃除するんで」
「そっか...お仕事、大変だね」

ニコリ、と、それは完全に『愛想笑い』

俺が好きな可愛い女の子は、みんな、それはそれは可愛く笑うんだ。

それが『愛想笑い』だとしても、気付かせない位に。

久々に食らったあからさまな嘘の笑顔に、溜息を紫煙と一緒に吐き出して、灰皿に煙草を押し付けた。

帰り際に、店員さんの名札が見えた。

「ん...？」

名札には『四月一日』の四文字。

エイプリルフール？

彼女は俺の視線なんて気にせず、店内に戻った。