楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ7)

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7.あい。ページ7

「あ、コンビニ寄って良い？」
「うん、良いよ」

駅に下りてちょっと歩いた時、ふと思い出した。

男の責任の、アレ。
もう無くなってたなぁ、なんて。

駅前のコンビニは、蛍光灯で煌々と明るい。

そんな明るい店内で、俺はあんまり健全さを感じない小さな箱を手にしてレジに行く。

「いらっしゃいませ」
「あー、KOOLのブーストも...あ、８ミリの方下さい」
「はい、かしこまりました」

店員さんが煙草をスキャンした後に、使い道は完全に一つしか無いゴムが入ってる箱を手にする。

ほんのちょっとだけ気まずくて、チラっと店員さんを見ると顔色一つ変えずにスキャンして「940円です」と小さく微笑んだ。

まぁ、そうだよな。

仕事だもん。

こんな事にいちいち照れてたら仕事にならないか。

「ねぇ、何買ったの？」
「えっ？えっとぉ...煙草」

雑誌を立ち読みしてたはずのアイちゃんがいつの間にか隣に立って俺の腕に絡みつく。

さっ、とコンビニ袋を鞄に入れて財布から千円札を出すとそれを店員さんが受け取る。

「60円のお返しでございます」
「はーい...どうも」

一瞬、お釣りを返してくれたその手が触れてもう一度店員さんを見ると、目が合った。

店員さんは俺と目が合った瞬間に、隣に居るアイちゃんを見て、もう一度俺を見て口角を上げる。

「ありがとうございます。またご来店くださいませ」
「...ありがとーございまーす...」

あー...絶対にこれから何するか想像されちゃったなぁ。

ってか、さっきの店員さんってこないだ俺の首見ちゃった子だよなぁ...。

店を出る前に、店内を振り返ったらその店員さんはレジから出ておにぎりの整理をしてた。

こないだは朝。

今日は夜。

女の子なのにこんな不規則な仕事、大変だな。

「雅紀くん？」
「あ、ごめんごめん。行こっか！」

俺はアイちゃんの肩を抱いてうちに帰る。

帰ったら、やるコトなんて俺もアイちゃんも一つしか考えてなくって。

変な駆け引きも、雰囲気作りも無くすぐにベッドルーム。

可愛い女の子は、大好き。

キモチイコトも、大好き。

だけど、やっぱり朝になると魔法はホロリと解けた。

「仕事だから急がなきゃ」って帰り支度をしてるアイちゃんの後姿に訊く。

「ねぇ、アイってどんな字？」
「えー？藍色の、藍だよ」
「あ...そっちなんだ」

やっぱ俺、愛、見付けられないや。