楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ46)

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46.ホールケーキ。ページ46

「何か無いかな...」
「え？」
「何か...あっ！ちょっとここで待ってて！」

Aちゃんはそう言うと、店内に入って行った。

俺は「待ってて」って言葉を素直に守って、店の外でAちゃんを待つ。
ケーキを並べてた長机は、もう片付けられている。

冷える手をスリスリと擦り合わせてたら「お待たせ！」ってAちゃんが戻って来た。

「はい、これ！」
「えっ？」

反射的に両手を出したら、その上にケーキの箱を乗せられた。
さっきまで俺が売ってたホールケーキの箱。

「プレゼントってワケじゃないけど...」
「え...えっと、コレは？」
「賞味期限が明日の朝だから、もう廃棄になるの。だから良かったら、貰って！」

結構ズッシリと重い、その箱。

「一人で朝までにホールケーキ食べろって、キツイとは思うんだけど...でもケーキあったら誕生日って感じするでしょ？」
「アハハ！一人でホールケーキかぁ！ありがと！」

Aちゃんが食べろって言うなら腹いっぱいになっても、気持ち悪くなっても、太っても食べる！

本当は...一緒に食べたいんだけどね。

「でー...これ！」
「ん？」

レッドブルを自分のポケットから出してニッコリ笑う。

「はい、どうぞー」

Aちゃんは、両手が塞がってる俺のコートの右ポケットに青い缶をストンと入れた。

「で、これも」

自分の顔の横に俺が吸ってる銘柄の煙草を出して「本当は吸うの辞めた方が良いと思うけどー」って言いながら今度は左ポケットにストンと入れる。

「ホントごめんね、こんなしょーもない物しか今は用意できなくって...」

ごめん！って両手を合わせてペコリと頭を下げる。

「ううん...ごめんなんて全然...嬉しいよ」

俺の部屋のチェストの上にある、前に君から貰ったまだ飲めない青い缶。

その横に、また一本並ぶことになるな。

吸えない煙草も、一緒に並べて置こう。

せっかく君がくれたのに

飲めない、吸えない。

無くなっちゃうなんて、勿体ない！なんて

俺、本気で思ってるんだよ？