楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ32)

今日:17 hit、昨日:13 hit、合計:872,315 hit

32.大切な質問。ページ32

「Aちゃんはさ...彼氏、いたり、する？」

すっかり忘れてたけど、俺、大切な事訊き忘れてた。
これ、訊いとかなきゃ。

彼氏いるって言われたら、奪えば良いとか思うけど...

でも、やっぱ人のモノ奪うのは違う気がするし...
でも、奪いたくなるかな、なるよな...
でも...でもなぁ...

「居ないよ」
「そっかー...って、えっ！？居ない！？」
「うん、居ないよ。居たら男の子と一緒に帰ったりしないでしょ？」
「あ、そうなの？」

そんなもんなの？

「だって、もしこうやって他の男の子と歩いてる姿を彼氏が見たら良い気分はしないと思うから」
「...なるほどね」
「好きな人を不安になんて、させたくないでしょ？」

張りのある声で、キッパリと言う。

俺に...そんな風に想ってくれてた子なんて、居たのかなぁ...。

風がビュウって吹いて、Aちゃんが被ってたフードが捲れる。

仕事が終わったからなのか、纏めずに下ろしてるだけの黒い髪の毛がサラリと揺れた。

「さむっ！フード、あるのと無いのとでは全然違う！」

Aちゃんは笑いながら、またフードを被ってしまった。

一瞬だけ見えた髪を、それだけの事を、もっと見ていたかったな...ってちょっとガッカリして。

「あ、ここで大丈夫だから」

Aちゃんは、前に送った時と同じ場所で俺に言う。

「じゃあね」

軽く手を振って、自転車に跨ったAちゃんの腕を

思わず掴んでしまった。

当然だけど、凄いビックリした顔で俺を見て

やっぱ、警戒心、出して来る。

掴んでた腕を、パッと離して自分のポケットに突っ込んだ。

「彼氏...居ないならさ...」

俺と...付き合わない？

「...なに？」
「居ないなら...」

俺を彼氏にしてくれませんか？

俺の彼女になってくれませんか？

「クッ...クリスマスは一人なの！？」

言えないよ、言えないって！言っちゃダメだって！
そんな事！
知り合ったばっかで、俺の事まだ警戒してるのに。

俺だって、まだAちゃんの事全然知らないのに。

そんなのって、絶対に軽率だ。
そうでしょ？

「クリスマスは、イブも当日もお仕事です！」
「お...仕事」
「さみしーくケーキ売ってます」

警戒心が解けた目で大きく笑う。

「寂しいクリスマスだね」
「仕事してたら気が紛れるから良いんですー」

ブーッと尖らせた口が、可愛くて。

警戒心より人懐っこさが強くなった目が、可愛くて。

抱きしめたくなっちゃったけど、そこはグッと我慢...だよね。