楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ31)

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31.きっと。ページ31

同じようなカーキ色のモッズコート着て

同じようにファーの付いたフードを被って

暗い住宅街の道を並んでチャリ押して歩く。

「暗くて狭い道をさ、並んでチャリ乗ったら危なくない！？」なんて言って、歩くことを提案してみた。

Aちゃんは別に疑う感じも無くって「確かにそうだね」って自転車から降りてくれた。

ホントはね、ちょっとでも長く一緒に居たかっただけなんだけど。
ちょっとでも、もうちょっとでも、Aちゃんの事知りたいなと思ったから。

自分でも中学生みたいだなーって思う。

『一緒に帰ろう』なんて、最後に言ったのはきっと高校の頃だよなぁ。

それ以降は、ほら、女の子を誘う言葉ってそんなんじゃなくなっちゃったから。

フワフワ揺れる、Aちゃんの被ってるフードのファーをチラッと盗み見て

こっち見ないかなーって、見ろーって、念じてみる。

「ねぇ、相葉くん」
「えっ！？通じた！？すげっ！」
「...何が？」

念力が通じたようにこっち見たAちゃんにビックリして、心の声全部出ちゃったよ...、もう。

「ううん、何でも無い！...なに？」
「相葉くんは、彼女居ないの？」

えっ！？

何で！？

それ、気にしてくれるのってさ...俺の彼女になりたいから？だったりする？

「いっ...居ないよ！...何で...？」
「やっぱり男の人って、特定の人を作らずに色んな女の子とアソぶ方が楽しいのかなぁ...と思って」
「あ...え？」

うわー...辛辣。

「俺、そんな風に見えてる？」
「んー...まぁ」
「そっか...」
「あ、ごめんなさい！失礼な事、だったよね！そんなの相葉くんの自由だよね！ごめんなさい！」

想像もしてなかった言葉に何も応えらんなくて笑うの忘れちゃった俺に、Aちゃんは慌てて何度も謝った。

「謝んないでよ、そー見えても仕方無いし！そんなトコばっか見せちゃったし！」

Aちゃんは曖昧に笑った。

落ち込むなよ、俺！
そう思われたって仕方無いような事してたんだから。

「...でもね、Aちゃん」
「ん？」
「俺、恋したいなって思ってるよ？真面目に、ちゃんと」
「そうなんだ、良いと思う！きっと、その方が幸せだと思うよ」

Aちゃんがニッコリ、微笑む。

真面目に恋、したいよ。

真面目に恋、してるかもしれない。

このドキドキはきっと『恋してるから』なんだから。