楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ20)

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20.レジスター。ページ20

ワタヌキさんの目が見れなくって、視線を外して彼女の手元を見ると俺が毎号買ってるファッション誌。

「あ、それ今日発売だっけ」
「うん、今日発売」
「じゃあ一冊貰うね」

ワタヌキさんの手に重ねられた雑誌の山から一番上のを一冊取る。

「今日はお一人ですか？」
「えっ！？いや...えーっと...俺、別にいつも女の子連れてる訳じゃないよ？」
「そんな事言ってないよ？お一人だなーって思っただけで」
「あ...」

クスクス笑いながらワタヌキさんが雑誌を棚に差し込んで行く。

「あ、それ買うんだよね？レジ入るね」
「うん」

ワタヌキさんがちょっと駆け足でレジに向かう。

そんな急がなくっても良いのに。
今、お客さん俺だけだし。

レジに雑誌を置くとちょっと笑いながら「いらっしゃいませ」ってまた言う。

「750円...あ、煙草は？」

言われてケツポケットを探ると、まだ半分は残ってそうな手触り。

「今日は大丈夫、ありがと」
「そのまま煙草止めれば良いと思うよ」
「えー...やっぱ煙草嫌い？」
「吸ってる姿は格好良いと思うけど、体には悪いでしょ？あ、750円です」

まるでお姉さんみたいな話し方。

きっと俺より若いと思うんだけど、弟とか居るのかな。

「あ、そうだ！」

俺から1000円札を受け取りながら、何かを思い出したように俺の目を見る。

あまりに真っ直ぐな視線で、俺はまたドキっとしちゃって。

「な...に？」
「こないだくれたクッキー、美味しかった！ありがとう。ちゃんとお礼言ってなかったから」
「クッキー...あぁ！ううん、全然そんな...うん」

お釣りの250円を俺に返してくれる時に、やっぱり少しだけ触れる手。

お金のやり取りする時、丁寧にしようと思うと手は触れてしまうもんなんだ。
俺だってレジするもん、分かってる。

なんだけど...

そのままギュって手を握りたくなってしまう自分に、引く。

もう、ニノのバカ。

ニノのせいで、俺、ヘンタイみたいになってんじゃん。