楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ16)

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16.クイズ。ページ16

ニノは箸で浅漬けを挟んだまま、俺の顔を見てる。

「...それは...新種のゆるキャラか何か？」
「え？あぁ、エイプリルフールちゃん？コンビニの店員さん」
「コンビニの店員さん...が、エイプリルフールちゃん...？マジ、オレいよいよ相葉さんを理解できなくなったかもしんねぇわ」

浅漬けを口に放り込んでポリポリと良い音で食べながら、ニノは頬杖をついた。

「ってか、エイプリルフールちゃんって長いなぁ...本人も嫌だったって言ってたし」
「何？あだ名なの？」
「エイプリルちゃん...まだ長いな。あ、プリちゃんが良いかな！」
「どこチョイスしてんだよ...あ！なぁ、もしかしてさぁ...」

四月一日って書く苗字だったりすんの？と、眉間に皺を寄せて言う。

「えっ！凄い！何で分かったの！？」
「エイプリルフールって呼ぶ他の理由があるなら、逆に教えてくれや」
「ニノまだ俺の事、理解してくれてたね！」
「喜ぶべきなのか、微妙な所だな...」

ニノはフッと小さく笑いながら、煙草を唇に挟んだ。

ライターがなかなか点かなくてチッと舌打ちをするニノに、俺は自分のジッポの火を差し出す。

「ん、サンキュ」
「ねぇ、その苗字の読み方ってニノ分かる？」
「オレのお仕事って、何だった？」
「...出版社の編集者さん」

フゥっと煙を吐き出しながら「敏腕編集者ね」と口角を上げる。

「日本語を扱うコトが生業なの、オレ」
「じゃあ分かる？」
「当然だろうが。あ、じゃ、クイズな？四月一日って、どんな季節？」
「春...かな」

俺も煙草を咥えて火を点ける。

「春になるとどーなる？」
「花粉症になる」
「それ、お前がだろ。服だよ、服。相葉さんの得意分野じゃん。服」
「あー...春服になる。薄手になるよね」

うんうん、とニノは頷く。

「それだよ、答え」
「え？」
「四月一日には服から綿が抜けるの。まぁ昔の話だから、着物な？」
「綿が抜ける...」

...で？

綿が抜ける、って苗字なの？

「ワタヌキ」
「ワタヌキ？」
「そ、ワタヌキ」

短くなった煙草を灰皿にギュッと押し付けたニノが、小首を傾げながら「で？ワタヌキさんは可愛いオンナノコなの？」と身を乗り出して来た。