楽園クラッシャー【ars M.A】 (ページ1)

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1.ここは楽園。ページ1

グラリ、と目の前が揺れた。

ズキン、と頭が痛む。

「...っつー...呑み過ぎたぁ...」

居酒屋のトイレに向かう廊下の途中で壁に凭れる。

「ヤベ...目ぇ回る...」

調子乗ってイッキしすぎた...。

何飲んだっけぇ...ビール、焼酎、ワイン、ポン酒...うわぁ...ちょーチャンポンしてる、俺。

そりゃ目も回るよ。

「まーさきくんっ！」

目を閉じて、息を整えてると突然声を掛けられた。

片目を薄く開く。

ゆらゆら揺れる頭で考える。

...誰...だっけ？

「大丈夫ぅ？かなり飲んでたもんねぇ」
「んー...大丈夫」

クルンと綺麗に巻かれた長い髪から、フワンと甘い匂いがする。

フラフラな俺の腕に、おっきい胸を押し付けるように寄り添って、その女の子はニコッと笑う。

「えーっ...と...」
「ヒトミ、だよ？名前くらい覚えてよぉ！」
「ヒトミ...ちゃん」
「そうだよ？私は最初っから雅紀くん狙ってるのにぃ！」

狙ってる...って、すげぇハッキリ言うんだな。

でもそこまで割り切ってると、逆に気持ちイイ位。

「...俺が良いの？」
「雅紀くんが良いな」
「そ？...ウレシ」

俺が良い、なんてさ。
やっぱ、嬉しい。

それが例え、二時間前に合コンで初めて出会った女の子でも。

何かを期待して、俺をじーっと見上げるその唇にチュッと軽く口付ける。

それだけで、トロンと蕩けた顔すんの。

可愛いな。

「...抜け出しちゃう？」
「え...？」
「泊まれるオトナのお城にでも、行っちゃう？」
「...行っちゃう！」

気持ちにも欲望にも素直な女の子は、好き。

俺はヒトミちゃんの肩を抱いて、合コンを抜け出る。

酔ってクラクラした頭と、火照った身体で、フワフワな女の子を抱き締める。

可愛い。

大好き。

可愛い。

可愛い。

キモチイ。

ここは、きっと楽園。