PRESTO！【ars M.A】 (ページ10)

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10.精一杯の手首。ページ10

駅前にある近所の神社でも良かったけど、それじゃーあっとゆー間にお参り終わっちゃって「バイバイ」になりかねないな...と思って

ちょっと離れた場所にある有名どころの大きな神社に電車で向かった。

電車も混んでたけど、降りたら更に混んでて人の波に圧倒される。

駅の出入り口は、さながら満員電車。

「Aちゃん、大丈夫？」
「うん、大丈夫なんだけど...いてっ...」
「どしたの！？」
「んー...足踏まれた...」

何ー！？どこのどいつだ！
俺の可愛いAちゃんの足を踏んだのは！

思わず睨みをきかせながら周りをギョロギョロと見渡す。

でも犯人は特定できず...名探偵雅紀、大失態。

それにしても、凄い人だな。

「Aちゃん、ちょっと...」
「え？」
「はぐれちゃう...から」
「...え？」

Aちゃんの手首を、キュっと握る。

「人多いからね！今だけ引っ張ってってあげる！」
「あ、うん！ありがと」

ほっそい手首は俺の手が簡単に一周して、あんまり強く掴むと痛いだろうからって気を付けるんだけど

無意識にキュッキュって手に力が入ってしまう。

その度に「いかんいかん」って力を緩めた。

華奢な手首を握ってると、胸がキュンってなる。

甘ぁーい！俺！

駅から出て、神社に向かって暫く歩くと道が広くなったせいか少しだけ混雑がマシに感じる。

人混みが暑くて汗ばんでたオデコに、冷たい風が気持ち良い。

俺は掴んでたAちゃんの手首をソッと離した。

「...やっぱ混んでるね！こんなにいっぱいの人、どっから湧いて出て来たんだろ！正月なんだから家でジッとしてれば良いのにね！」

何か照れ臭くって、Aちゃんの手首の温もりでホカホカしてる自分の手を着物の袖の中に入れながら話す。

「私たちもきっと周りの人からそう思われてんだろうね」
「そっか。お互い様だね」
「フフッ、だね」

神社までの道を並んで歩く。

参道に入って屋台が並び始めると、立ち止まる人達も増えてまたAちゃんとはぐれそうになっちゃう。

「Aちゃん、えっと...はぐれちゃう...から」
「うん？」
「えっと...」

Aちゃんと本当は繋ぎたい手を袖の中でグッパさせて、ギュっと拳を作る。

「...袖っ！俺の着物の袖、掴んで良いよ！」

やっぱ無理！手なんか繋いだら軽い男のまんまだもん！

「じゃあ遠慮無く」
「遠慮、いらないいらない！」

だけどキュって俺の袖を掴むAちゃんは可愛くって

口元が緩んで緩んで仕方無い。