アイドラッグ【ars K.N】 (ページ10)

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私達が付き合い始めると、クラスメイト達は「え？今まで付き合ってなかったの？」って逆に驚いていた。

まー君も、手を繋いで(ってゆーか、和也が半ば強引に繋いで来る)帰ってる私達を見て「やっと引っ付いたー」って笑ってた。

だけど付き合ったとは言え、手を繋ぐようになった程度でやっぱりそれまでと何も変わらなくって

一緒に帰って、たまにデートして、学校で喋って、また一緒に帰って...それだけだったから正直、付き合う前までと何が違うのか分からなくて。

あんなに「やだやだ」言ってたくせに、和也から何もして貰えないコトが不安で

友達のりっちゃんが「彼氏とチューしちゃったー！」なんて言ってるのを、モヤモヤした気分で聞いてた。

「ののは、ニノちゃんとどこまでヤっちゃったの！？」

そんな風に訊かれて「何もしてないよー」って答えても、全然信じてくれない。

「ニノちゃんが何もしないなんてありえない」とか「椅子に座ってるだけで、あんな色っぽいのに」とか言われて和也を見ると、立ってる友達を見上げて喋りながら椅子の上に大股開きで両脚を乗せてその脚の間にダラーンと両腕を垂らしてる。

「ホントに何も無いの？」
「...うん」
「うっそ！のの、隠してるんでしょ！」
「隠してないよー...ホントに何もされてないもん...手、繋ぐだけ...」

私の発言に「それはそれで可愛いー！」なんて、みんなは盛り上がったけど私はやっぱりちょっとモヤモヤ。

自分が『彼女だから出来る事もある』なんて言ってたくせに。
本当は私の事なんか好きじゃなくって、からかってるだけなんじゃないかな？って思う。

モヤモヤ。

モヤモヤしながら、もう一回和也を見たら目が合った。
和也はフフン、って感じで微笑んで柔らかそうな手首をヒラヒラさせて私に手を振る。

「うわ！ニノちゃん、可愛いー！」
「良いなぁ、のの。あんな可愛い彼氏」
「しかも色っぽいんだよ？羨ましいー」

みんなが私をグイグイ押しながら、冷やかして来た。

こーゆーのは、嫌な気がしない。
『和也の彼女』、ってゆー立場は少し私を強くする。

だけど、余計に不安になるんだ。

私は本当に和也の彼女なの？

和也は本当に私の彼氏なの？

それでも放課後になると「A、帰ろっか」って私の席まで来てくれる和也に、その不安はシュゥって消える。

手を繋ぐと、心の中は『大好き』でいっぱいになる。

でも本当はもっと近付きたいの。

言えないんだから、気付いてよ。