アイドラッグ【ars K.N】 (ページ27)

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度ページ27

一度壊れた物は直らないって和也は言ったけど、まー君はその時にヨリを戻した彼女と結婚して、もう可愛い息子も居る。

「あの時、元サヤした自分を褒めてやりたい！」って、今でもまー君はそう言って笑う。

和也が言ったあの言葉は今でも私の胸を絞めつけて、こんな想いを抱き続けてる私を嘲笑ってるみたい。

元サヤが良いとか、悪いとかじゃ無い。

和也が、『元サヤが一番ありえない』って言った事だけが私にとっては二人の真実。

だから、こんな想いは早く消化しなきゃいけなかったのに。

どうしてまた、再燃してしまうような事が起きてしまったんだろう...。

厄日だ...

もう、厄日だとしか思えない。

「A？」
「あ...え...っと、ボーッとしてた...ごめん」
「いや、良いんだけど。大したコトじゃないし」
「......」
「やっぱ大したコトかな...」

和也は椅子に深く掛け直した。

「しっかし。10年以上、一回も会うコト無いとかあるんだなー」
「......」
「何でAは同窓会とか、全然来なかったの？」
「あ...たまたま、いっつも予定があったの」

嘘。

和也に会うと、もうこの想いを押さえきれないと思ってたから。

「ふーん...」
「うん...」
「電話番号、変えたでしょ」
「え...？」
「オレ、何度か電話した。知ってる？『お掛けになったお電話番号は...』ってあのお姉さんの声で言われる虚しさ」

視線をホッケに落としながら、和也はちょっと笑いながら話す。

「お前さ。まー君に、オレに絶対自分の居場所を教えるなって言ったらしいじゃん」
「えっ！？何で...それ」
「A、まー君の天然っぷりを忘れた？必死に隠そう隠そうとして、逆にバラしちゃう奴だよ？」
「あ...」

まー君に私は、本心は隠して『和也にもう二度と会いたくないから、彼に私のコト話さないでね』って頼んでた。
『任せて！俺の口はホタテの口より硬いよ！』なんて、まー君言ってたのに...

それを完全に信用してた...あの天然ボーイめ...！
ホタテ、炙られちゃってるじゃん！
口、パックリ開いちゃってるじゃん！

「それからね？まー君とAは仲良しかもしんないけど、オレとまー君はもっと仲良しなのよ。残念ながら」
「...うん...え？」
「オレのお願いは、何だかんだで聞いてくれんの。あのヒト」
「それ、どーゆー...」

和也が、あの頃と変わらない鳶色の目を細めて

「A。何でオレと今日、あんなトコで偶然会ったと思う？」

薄く、笑った。