純情サディスティック【ars K.N】 (ページ9)

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9.オトナのオトコ。ページ9

って言うか、ちょっと待って。

一回り上って事は、二宮さんって30歳なの？

嘘だぁ。
30歳のオッサンの肌がこんな綺麗なはずが無い。
こんな可愛い顔なはずが無い。

首をコキコキと鳴らしてるその仕草は...オッサンっぽいけど...

でもやっぱり30歳は嘘でしょ？

「本当に...？」
「何が？歳？」
「はい...30歳？」
「嘘つく必要ねぇだろ？そこ」

時空が歪んでるとしか思えない。

二宮さんの周りだけ時空が歪んでて、時の進みが遅いんだ！

そうだ！そうに違いない！

...なんて、馬鹿げた事を本気で思ってしまう程に目の前に居るこの30歳のオッサンは...

「あーマジ眠いよぉ...」

フワァと大アクビをするこの30歳のオッサンは...

「A何、見惚れてんの？分かるよ？オレ、カッコイイもんな」

あぁあぁ、その通りだよ。

信じられない位に、カッコイイよ。

「あれ...？」

最終締切までのスケジュールを見てて気が付いた。

「これ...最終締切日、伸びてませんか...？」

こないだまで言われてた締切より、三週間伸びてる。

「あんな原稿の進み具合では、あの締切に間に合わす為にはかなりの無理が必要になるからな」
「え...」
「上に掛け合ってやったんだよ。オレ、交渉術には長けてんの」

ある種ネゴシエーターだよな、って言いながら書類を机でトントンと揃える。

「オレ、Aに頑張っては欲しいよ？」
「はい...」
「でも絶対に無理はさせたくないの」

揃えた書類をクリアファイルに入れながら、二宮さんは話す。

「物を書くこと、嫌いになって欲しくねぇからさ。楽しんで欲しいから」

書類を入れたクリアファイルを、次は床に置いてた鞄に入れる。

「好きな事を仕事に出来てるってゆー幸せをな？Aには思いっ切り感じさせてやりてぇから」

本だの書類だのがいっぱい入ってて重そうな鞄を、また床に置いてクスッと笑う。

「大体さ、日本人って人生のほとんどの時間を仕事に費やしてんだよ。だったら楽しんだモン勝ちじゃん」

そう、思わねぇ？って、ワクワクしたような笑顔で話すアナタは

まるで少年みたいで。

なのに、私よりやっぱりずっとずっとオトナ。