純情サディスティック【ars K.N】 (ページ8)

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8.ひとまわり。ページ8

それとこれも...と、何枚か紙の入れられたクリアファイルを渡される。

「これは？」
「これから最終締切までの予定。組み直した」
「え？」

二宮さんは、多分私に渡した物と同じ内容の書類を見ながら白い首筋をポリポリと掻く。

「前までのスケジュールは、Aにはタイト過ぎるわ。あれじゃストレス溜まるよな」

口の端を軽く上げながら、私をチラ見してすぐにその目は書類に戻る。

「女子高生は忙しいよなぁ、オッサンが思ってるよりずっと」
「あ...えっと...」

忙しくは...無いと思うけど...
私のワガママだっただけなんだけど...

「菅原のオッサンはさぁ独身で娘なんていねぇし、自分の高校時代なんて遠い昔過ぎて思い出せなかったんだな」

悪い人じゃねぇんだけどなぁ、とククッて笑う。

「ま、オレはまだ高校時代の事鮮明に思い出せるし高校生に無理のかかんないスケジュールにしたつもりだから」
「...ありがとうございます...」

そうだよね。

二宮さんって、きっとまだ凄く若いはず。

あ、だから私の担当にされちゃったのかな。
面倒な作家は新人に押し付けてしまえ！...みたいな...。

「二宮さんって、まだお若いですよね...」
「オレ？気持ちは永遠の17歳だけどなぁ」

フハハッ！って豪快に笑う。

「でも、オトナのオトコよ？オレ」

二十歳過ぎてたら誰でも大人だとは思うけど...。

「Aと干支、一緒なんじゃね？一回り上だから」
「ひとまわ...えぇっ！？...あっ！うわっ！！」

ビックリし過ぎて、思い切り身体を仰け反らしてしまったら

その勢いでガッターン！と派手な音を立てて、椅子が倒れた。

椅子だけが、倒れた。

私の身体は倒れる寸前で

二宮さんに、腕を引っ張られてこける事無くどうにか持ち堪えた。

「あ...すみません...」
「何してんのよ、お前」

力が抜けてペタンと座り込んだ私の両手を、二宮さんの細い腕が掴んで立たせてくれる。

ヒョイって、軽々と。

こんなに綺麗でも、華奢でも、やっぱり男の人なんだ...って思うと

胸の奥の奥の方がポッて熱くなった気がした。

私が呆然と立ち尽くしてる間に、二宮さんは倒れた椅子も起こしてくれて自分はまた折り畳みの椅子にドカッと座った。

「A...」
「はいっ！」
「体重、オレと同じ位かな」
「...はあっ！？」

クハハって可愛い声で笑やがって！

このっ！鬼っ！悪魔っ！！

私のトキメキを返してっ！！