純情サディスティック【ars K.N】 (ページ6)

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6.藍色の部屋。ページ6

翌日、学校から帰って玄関のドアを開けるとそこに見慣れない男物の靴があった。

心臓が変な感じでドックンと鳴る。

あの天使に会えるのが嬉しいから、なのか。

あの悪魔に会わなきゃいけないのが怖いから、なのか。

どっちなのか分からないけど、心臓はドクドクと走ることをやめてくんない。

恐る恐る二宮さんがいるであろうリビングの扉を開くと、予想外にママしか居ない。

「あれ...？」
「あ、Aお帰り。二宮さん、部屋で待ってらっしゃるわよ」
「部屋...」

無意識に上を見上げる。

「A、素敵な人よねぇ。二宮さん」
「...そうかな...」

見た目だけはね、確かに素敵だけど。

「行ってくる...」
「お仕事、頑張りなさいよ？」
「はい...」

頑張らなかったら、何を言われるんだろう。
あの悪魔に。

昨日はドキドキしながら上った階段を一段ずつ普段より時間をかけて上って

けど、うちの階段なんてすぐ二階に到着しちゃって

フゥ...と小さく息を吐いてから、自分の部屋の前に立つと少しだけドアが開いていた。

何と無く、音を立てないようにソーッ...とドアを開くと電気をつけず夕方から夜に変わる藍色の光が射し込む薄暗い部屋の奥に

二宮さんは、居た。

昨日と同じように折り畳みの椅子に座って

俯いて

脚を組んで

腕も組んで

多分...居眠りをしてる。

スースーと小さく聴こえる寝息に合わせて、細い肩が上下してる。

そっと近付いても、起きそうにない二宮さん。

「白い...」

薄暗い中で見ると、益々白く見える首筋。

二宮さんの足元にしゃがんで、俯いてるその顔を見上げる。

閉じられた目に、スッと通った鼻。
半開きになってる、薄い唇。

「綺麗...」

喋らなければ、本当に素敵なのに。

「天使なのに...悪魔」

その綺麗な肌に触れたくなって、思わず手を伸ばした時

パチッ

って、音がしたかと思う位に二宮さんの目が『パチッ』と開いた。

余りにも驚くと、人は声が出ないんだってこと、18歳にして初めて知りました。

そして、動くことすら出来ないって事も、私は今、初めて知りました。

二宮さんの頬に伸ばした手は、その柔らかそうな頬に触れる事は無く虚しく行き場を無くし

私は二宮さんの顔を下から見上げてる。

...ヤバイ！絶対怒られる！
こんなの、ヘンタイみたいだもん！

「...おはよ、A」

え？

二宮さんは、私の頭をポンポンと撫でて柔らかく微笑んだ。