純情サディスティック【ars K.N】 (ページ39)

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39.惚れんなよ。ページ39

「あ！オレ、あれ得意」

園内を歩いてた二宮さんがゲームコーナーを指差した。

そこにはボールを的に当てられたらぬいぐるみが貰えるってゆー、遊園地にありがちなゲーム。

「オレ、野球やってたから」
「え！運動してたんですか？」
「文武両道だったの、オレ」

ンフフって笑ってゲームコーナーに行った二宮さんは、早速お金を払ってボールを３球手にしてた。

「３球もいらねぇな」
「またまたぁ」
「信じてねぇな？見てろよ？」

得意げな表情で、振りかぶる。

「惚れんなよ？」

投げる一瞬前に、そんな一言。

もう、惚れてるし。
もう、手遅れだし。

「惚れません！」ってゆー私の言葉と、ガシャーンってボールが的に当たった音が同時に響いた。

「やるよ」
「...ありがとうございます」

二宮さんの戦利品、ワンコのぬいぐるみを手渡される。

トロンとした目が、ちょっと二宮さんに似てる。
そう言えば、カレンダーのワンコも二宮さんに似てたなぁ。

「二宮さんって、犬みたいですね」
「フハハ！何だ、それ。犬みたいな忠誠心は全然無いけどな」
「あー...無さそう」
「オレに忠誠心を持ってくれる人間を側近に置きたいと思っている」
「王子通り越して、王様ですね」

傍若無人な王様が「あ、次はあれ乗るか？」って見上げた先には、観覧車。

観覧車！
夢！
私の夢だった！
好きな人と、観覧車！

「はい！乗る！」
「じゃ、行くか」

ポフ、って背中に添えられる手に、また私の背中は熱くなる。

「二宮さん、もう吐きそうなの治まりましたか？」
「あー...思い出させるなや...」
「お化けも大丈夫ですか？」
「アイツらは地獄に落とす」

二宮さんってそんな力があるんですか、なんて笑って背中の熱さを誤魔化す。

素直に二宮さんと一緒に遊園地で遊んでる事を、嬉しいって思えたら良いのに。

取材なんかじゃなくって、これが本当のデートだったら良いのに。

二宮さんが、私の彼氏だったらどんなに幸せだろう。

私は抱いてた犬のぬいぐるみをギューって抱き締めて、二宮さんの手の感触をあんまり気にしないように観覧車まで歩いた。