純情サディスティック【ars K.N】 (ページ34)

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34.POTATO。ページ34

イイオトコにしか似合わないような、カッコイイ車の中にポテトの匂いが充満する。

「移動しながらご飯って、ドライブスルーだったんですね」
「たまに食いたくなるんだわ」

そっか、大人にはファーストフードって『たまに』の物なんだ。

「A、ハンバーガー取って」
「あ、はい」
「剥いて、その紙」
「はい」

言われるままにハンバーガーの包み紙を半分剥いて、二宮さんに渡す。

「サンキュ」

片手にハンドル、片手にハンバーガーの二宮さんをチラ見しながら私もハンバーガーを齧る。

あんまり食欲無かったはずなのに、身体は食べ物を欲しがってたみたいでパクパク食べれちゃう。

紙袋に手を突っ込んで、その中にあるポテトもモソモソ食べた。

車で良かった。
これ、お店で向かい合ってたら恥ずかしくて食べられないよ。

「A」
「はい？」
「ポテト、ちょーだい」
「はい、どうぞ」

私は紙袋をそのまま二宮さんに向けた。

「食えないって」
「え？」
「オレ、両手塞がってんだけど？」

ンフフって、笑う二宮さんは確かに両手塞がってる。

「ハンバーガー咥えたら、片手空きますよ」
「そしたら口が塞がるだろうが」
「あ、そっか」
「食わせてよ」

...はい？

「Aが食わせてよ」

えぇっ！？
食わせるって、食わせるって...それって...

世間で言う『アーンしてあげる』ってヤツですか！？

「あっ...あの、二宮さん！？」
「何よ、ポテト独り占めする気かよ。それ、二人分だぞ？」
「ちが...あの...」

私が戸惑ってたら、車は赤信号で停まった。

「食わせてくんないの？」
「えっとー...」

二宮さんが、緩く笑ってこっちを見てる。

そのまま、軽く口を開いて「あーん」って少し顎を上げる。

どうせならもっと大口開けてくれたら良いのに。

そしたら、「ブサイクな顔になってますよ！」なんて憎まれ口叩きながら10本くらいポテト突っ込んでやるのに。

なのに...すっごいカッコイイんですけど...。
もう今すぐスマホ出して写真撮ってしまいたい程にカッコイイんですけどっ！

私はほとんど二宮さんの顔を見れずに、その口に一本だけポテトを入れた。

「ンフフ、んま」
「...って言うか、車停まってるんだから今は片手使えますよね」
「あ、バレた？」

笑いながら紙袋にガサっと手を突っ込んだ二宮さんが、自分でポテトを食べた。

そして、ペロリ、と塩が付いたその指を舐める。

...ポテトってこんなやらしい食べ物でしたっけ？