純情サディスティック【ars K.N】 (ページ33)

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33.セブンティーン。ページ33

「昼飯、どうしたい？」

隣を歩く二宮さんが、訊く。

「腹は減って来た？」
「...あんまり、まだ」

こんなにお腹が減らないコトってあるのかな。

全然、食べたいって欲求が湧いて来ない。

「そっか。じゃ、昼は移動しながらにするか！」
「移動しながら？」
「そ！時間もったいねぇし。車戻るぞー」

私の背中に添えられる、二宮さんの大きくは無い、手。

ウールのブルゾンとデニムのワンピースとその下に着てるキャミソール。

手と背中の間には、たくさん障害物があるのに

私、背中に直接触れられてるのかなって位に、ドキドキしてる。

胸のドキドキが、背中にまで伝わって二宮さんにバレてるんじゃないかって不安になるのに

ずっと触れてて欲しくなる...。

だけど、コインパーキングに着く前にその手はスルっと私の背中から離れて二宮さんのコートのポケットに納まった。

私も、ブラリと下げてた手をポケットに突っ込む。

「何よ、またオレの真似？」
「違いますー。寒いから！」
「あぁ、手が？」
「はい。手袋も買って貰ったら良かったなぁ」

ドキドキしてたの、必死で隠すみたいに明るく話す。

「あ、移動しながらご飯って...どうゆーコトですか？」
「そのまんまの意味だけど？」

二宮さんは大きな紙袋が肩から下がって来たのか「よいしょ」って小さな声を出して、肩に掛け直してる。

「その掛け声、オッサンですね」
「あっ！出さないように意識してんだけどなぁ、出るわ」
「相葉さんの店でも出てましたよ」
「マジで？気持ちはセブンティーンなんだけどなぁ」

見た目もセブンティーンですけどね。なんて言わないけど。

だって、二宮さんはどんだけ見た目が若くたって大人なんだもん。

私よりも、ママとの歳の差の方が近いんだよ？

それに気付いた時の絶望たるや...生きてて初めて膝から崩れ落ちた。

見た目もセブンティーンですけどね。なんて言ったら

本当に二宮さんが17歳だったら、良かったのにって思っちゃうから。

そんな考えてもどうしようもないコト、考えちゃうから。

だから、絶対言わない。