純情サディスティック【ars K.N】 (ページ31)

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31.あとワンアイテム。ページ31

「サンキュ、相葉さん」
「うん、また来てね！」
「セールの時にな」
「ケチ！セールじゃなくっても友達割引してやってるだろ？」

店の外まで見送りに出て来てくれた相葉さんが、二宮さんの腕を小突きながら話すのを見てたら突然相葉さんの視線が私に向いた。

「あ！Aちゃん、ちょっと待っててくれる？」
「えっ？」

そう言うと相葉さんは走ってお店の中に消えた。

「...二宮さん、どうすれば...」
「待てって言ってたから、待ってたら良いんじゃない？」

戸惑う私を見て、二宮さんがククって笑う。

「お待たせ！」

戻って来た相葉さんが、真っ直ぐ私に近付いて来て

その長い腕が私の首にクルっと回された。

「えっ！？」

ナニゴト！？と思った次の瞬間、私の首はホカホカと暖かくなった。

「これは...？」
「首元、寂しいなって思ってね。今日ちょっと寒いし」

首に掛けられた色んな黄色の毛糸で編まれたミックスカラーのニットストール。

「黒とかダークな色の方が大人っぽくはなるけど、それじゃAちゃんの素材の良さを消しちゃうからね」

相葉さんが私の首にそれを綺麗に巻いてくれる。
まるでファッション誌のモデルさんが巻いてるように、オシャレな巻き方でふんわりと。

「うん、良い感じ！完璧だね！」

また、相葉さんがピースして笑う。

「あの...」
「それ、あげるよ！」
「えっ、でも！悪いです、そんな！」

絶対これ安物じゃない！
こんなふわふわした物がお手頃価格なはずが無い！

「大丈夫だよ、サンプル品だから売り物じゃないし」
「貰っとけよ、A。店長が大丈夫って言ってんだから、大丈夫なんだろうし。なぁ、相葉さん」
「うん、店長さんが良いって言ってんだから大丈夫！」

そっとストールに手を添えると、ふわふわほかほかあったかい。

「ありがとうございます...」

目の前で笑う、やたら爽やかでイケメンな店長さんと、サディストで無駄に美人な30歳のオッサン。

「さーてと！行きますか、A」
「あ、はい」

デート楽しんでねー！ってゆー相葉さんの明るい声を背中に聴きながら、私と二宮さんは歩き出す。

デートじゃ...無いんだけど。

デートだって私が勝手に思うだけなら、良いのかな。

デートだなんて思ったら、余計に辛くなったりしちゃうのかな。