3.ゆらゆら。 ページ3
ママがお茶を出そうとキッチンに立つと、彼...二宮さんは「お構いなく」と柔らかく微笑んだ。
「先生、いつもどこで原稿書いてます？」
背はあまり高くないんだ。
ちょっと、猫背？
「先生？聞いてる？」
「えっ！？あっ、私...ですか？」
『先生』って呼ばれるのは、やっぱり慣れない。
それに、出来れば『先生』なんて呼ばれたくない。
だから、菅原さんにもそう呼ばないで欲しいと頼んだら『Aさん』って呼んでくれるようになったんだけど...。
「うん、どこで原稿書くの？」
「自分の部屋で...」
「じゃあ、部屋に行こう」
そう言うと、ママにペコッと頭を下げて私の背中をそっと押した。
ドキン、と心臓が跳ねた。
「二階でしょ？」
「はっ...はい！」
階段を上りながら背中に二宮さんの掌を感じて凄く近くにその声を聞く。
チラッと振り返ると、そこにはやっぱり白く綺麗なお顔があって
「ん？」...なんて、小首を傾げながら口角を上げる。
望んでた綺麗なお姉さんじゃなかったけど、二宮さんが担当だったら私、頑張れるかもしれない...。
...なんて、本当にゲンキンで自分が嫌になる。
ごめんなさい、菅原さん。
菅原さんが悪い訳じゃ無くって...！
「ここです」
「お邪魔しまーす」
カチャッと開けたドアに、二宮さんがスルリと入る。
「菅原さんはいつもどこ座ってた？」
「あ、机の横にある椅子なんですけど...」
PCが置いてある机には、椅子が二つ並べてある。
私の為の椅子と、菅原さんの為だった折り畳みの椅子。
二宮さんは、ウンウンと頷きながら机に近寄って折り畳みの椅子にギッと音を立てて座った。
「はい、先生も座って？」
「あ...はい」
私が椅子に座ると、隣から私の目の前にあるPCに手を伸ばして来た。
...近いっ...！
目の前にふわっと揺れる黒髪。
男の人でもこんなに良い匂いするんだ...なんて、大きく鼻から息を吸ってみたり。
ドキドキする。
一目惚れ？
...まさかぁ。
でも...ドキドキする。
だけどね
こんな素敵な男の人が突然現れて、心がゆらゆらしない女の人なんて居るの？
誰だってドキドキするでしょ？
ドキドキするのが普通でしょ？
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=737d93b0b8e65d518115fdba3e25cc75...
作成日時：2013年10月15日 16時
