純情サディスティック【ars K.N】 (ページ16)

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16.眠り王子。ページ16

二宮さんは、5日に一度位のペースでうちにやって来た。

最初の締切こそ相当な枚数を『翌日』だなんて無茶な物だったけど、その後からは『無理させない』っていうその言葉通りに

高校生の私に負担の掛からないようにスケジュールを組んでくれていた。

お陰で私はまだ『容赦しねぇ』も『許さねぇ』も食らってない。

二宮さんは、だいたい私が学校から帰って来るより先に部屋に居て

だいたい私のベッドの上で、だいたいコロンと小さくなって寝てる。

布団に潜るのは流石にダメだと思ってるのか何なのか、いつも布団の上に寝そべってるだけ。

仕事しに来てるのか、休憩しに来てるのか、全然分からないなって思うけど...

私はベッドの横にペタンと腰を下ろして、少しだけその寝顔を眺める。

スースー、もう何度も聴いた二宮さんの寝息。

綺麗な顔に溜息が零れる。

私もこんなスベスベお肌になりたいなぁ...。

「...ヘェックショイ！！うー...」

綺麗な顔から出た突然の豪快なクシャミにビックリして「わっ！」って声が出ちゃったけど、二宮さんは起きない。

丸めてた身体をもっとギュッと丸めて、自分の事を抱き締めるように腕を動かした。

寒いのかな...
風邪ひいたら大変。

だけど布団を掛けてあげたくても、その布団は二宮さんの身体が乗ってて動かせない。

私は少し迷って、自分が椅子に座る時に膝掛けにしてるブランケットをその身体にそっと掛けて

またベッドの横に座って、二宮さんの寝顔を見る。

起こせば良いのに...って、自分でも思う。

だって、原稿は出来てるし。

だけど...

「二宮さん...」

小さく小さく、自分にしか聴こえないような声で呟く。

その言葉を口にするだけで、私の胸はキュッと縮む。

私は起こさない。
起こしたくない。

だって...

「ん...んん...」

ゴソゴソと二宮さんが身体を動かして、その目が薄く開いた。

「おはよ、A...」
「...お...はよござ...」
「あー！よく寝たわー！あ...コレ」

起き上がった二宮さんはブランケットに気付いて私を見る。

「Aが掛けてくれたの？」
「はい...寒そうだったから」

緩く弧を描く二宮さんの目。

「優しいな、サンキュ」

ふわり、私の肩にそのブランケットを掛けてくれる。

起こさないのはね？

綺麗な寝顔を見てたいから、よりも

起きてる二宮さんは格好良すぎて心臓に悪いって

私、気付いちゃったから。