純情サディスティック【ars K.N】 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:820,050 hit

13.ワンコ。ページ13

「あ、Aおかえりー。二宮さん、いらしてるわよ」
「...うん...」

やっぱり...。

約束は六時だったのに。
まだ2時間も先なのに。

初めて二宮さんが来た時、ドキドキしながら上がったのを思い出せない位に階段を上がる足が重い。

あれがたった二日前だなんて。

部屋の前で立ち止まる。

...何て言おう。

何を言っても、言い訳だ！って怒られそうだし...。

あ、でもちょっと待って。
約束は六時なんだから、そこまでは締切じゃないんじゃない？
2時間はまだ猶予があるはず！

...そうだ、それで行こう！

それで納得してくれる人だとは思えないんだけど、それしか今の私には方法が思い付かないんだからしょーがない。

緊張でバクバクしてる胸をトントンと小さく叩いてから、ソーっと部屋のドアを開けて

部屋の奥の折り畳み椅子を見た。

「...あれ？」

部屋の電気はついてるけどそこに居ると思った二宮さんは居ない。

トイレにでも行ってるのかな。

ちょっとホッとして、無意識に止めてた息をフッと吐き出して部屋に足を踏み入れる。

鞄を机の横に置いて制服のブレザーを脱いだ時、部屋の違和感に気付いた。

「...っ！？」

ビックリして大声を出しそうになった自分の口を両手で押さえる。

この人、何してんの...。

私が毎晩、実は『良い夢見れますように』なんて思いながら眠りについてるベッドの上に

クルンと身体を小さく丸めて、二宮さんは寝ていた。

スースー、昨日も聴いた小さな寝息が薄く開く唇から漏れてる。

もうこんなの、居眠りじゃない。
立派なお昼寝でしょ。

私は二宮さんを起こさないように物音を立てずに机の前に座って、PCを開く。

二宮さんが寝てる間に書き上げてしまえば良いんだ！

ほら、このカレンダーにも赤ペンで『18時』って書いてるんだし。

PCの横に立ててた、二宮さんが置いてったスケジュールがビッチリ書き込まれた卓上カレンダーを手に取る。

カレンダーの中には気持ち良さそうに眠ってる柴犬の子犬。

チラッと、ベッドで眠ってる二宮さんを見る。

「何かちょっと似てるかも...」

寝てる二宮さんは、やっぱり天使みたい。

この人が30歳のオッサンで口の悪い悪魔だなんて、まさか誰も思わないよね。