極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ30)

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307.ウサギ。ページ30

「これ...いつ...？」
「何？ンフフ、単語だけで喋んなよ」

上手く言葉が出て来ない私に、ニノミヤが軽く笑って

「いつ買ったのか？それとも、いつから隠し持ってたのか？」

そう訊いた。

「え...じゃあ、どっちも...」
「買ったのは一ヶ月くらい前。隠し持ったのは、部屋出る前にAがトイレ行った隙に」

ここに入れた、ってハーフパンツのポケットをポンポンと叩いて見せる。

「さすがにオレの思い描く首輪プレイはさせて貰えないかなーと思って」
「...どんなプレイを思い描いてんのよ」
「え？オレにそれを言わせる？言わせちゃう？」
「遠慮しとく」
「革製の首輪を、やたら面積の小さい下着を着せたAに装着してね、その先に鎖を...」
「結局言うんじゃん！」

パチンとニノミヤの肩を叩くと、フハハ！って楽しそうに笑う。

ダランと下ろしてた両脚を腰掛けてる流木の上に上げて、膝を抱え体育座りになった彼が

「あのね...」って、海を眺めながら呟く。

「プレイはまぁ、冗談だけどさ」
「冗談で良かった」

さすがにそこまでお付き合いできないよ。ごめん。

「Aを縛り付けておきたいってのは、本音だよ。怖かったらゴメンね」
「......」
「そのネックレス見る度に、オレを思い出せって思う」
「......」
「それ着ける度に、オレを感じろって思う」

こっちを見ずに、真っ直ぐずーっと海の方を向いて

独り言のようにも聴こえる、彼の言葉。

「オレに縛られててよ、って思う」

怖い？そう訊きながら、ニノミヤが体育座りの抱えた膝に頬を乗せて私を見た。

ううん、私は首を振る。

「オレはね、Aが居れば寂しくないの」

思わず「あ...」と小さな声が漏れた。

「ん？」
「...ニコチアナ...」
「ンフフ。あの花言葉、覚えてた？」
「...うん」

いつか、ニノミヤが突然送ってくれた『何でも無い日、おめでとう』の花束。
その花束を作ってたニコチアナっていう可愛い花。

忘れられるはずが、無い。

「Aが居るんだって思ったら、一人の時間も寂しくない。でも、Aがオレから離れてったら、誰と何人でいようがずっと寂しい」
「...カズ...」
「寂しかったらオレ、死ぬぞ？」
「フフッ、ウサギ？」
「ウサギが寂しかったら死ぬって、ガセネタらしいよ？」
「えっ！？うそっ！」

重い、人によっては嫌悪感抱いちゃいそうな程に重い想いを聴きながら笑い合う。

指先でネックレスに触れると

「ホント似合ってる」

彼が、優しく微笑んだ。