極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ28)

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305.おはよう。ページ28

おばあちゃんか、って位のへっぴり腰でニノミヤに手を引っ張られながら

やっとの思いで砂浜へ降り立つ。

そこは小さく、綺麗な海岸。

「お疲れさん」
「ありがと、一人じゃ降りられなかったわ...」
「Aの弱点は鈍臭いってトコだな」

ニッ、と笑ったニノミヤがクルッと海の方を見て「んー！気持ちいな！」って両手を挙げ背伸びした。

「すげぇな、ホントにハートに見える」

水面からニョキッと出てる二つの岩を指差して、彼が振り返る。

「本当だ！ハートに見える！」
「あ、この角度が一番ハートなんじゃね？」
「あー、うんうん！じゃあ、ここで写真だね！」

私もニノミヤもスマホを出して、何枚かの写真を撮った。

ある位置から見ると、綺麗なハートの形に見えるって言われてる二つの岩。

いつかCMで見たその岩が沖縄にあるんだって、ガイドブックを見た時に知って付箋を貼った。

「これ、待ち受けにしたら幸せになりそうじゃない？」
「これ以上幸せになったら、オレどーしよ！」

ハート岩を撮った液晶を二人で見ながら、お互いそれを待ち受けにして

「うわー、お揃いの待ち受けとか！」
「うわー、バカップルだねぇ、私たち」
「ヤバいねー」
「ねー」

笑いながら、駐車場に戻る為にまた険しい坂道を今度は必死で上がった。

・

翌朝は、仕事の疲れが今頃出たのか

はたまた、エキサイトしたニノミヤにあんまり寝かせて貰えなかったからなのか

なかなか二人とも起きる事が出来なくて、気が付くとお昼前だった。

ベッドの上に座って、カーテンの開いた窓の向こうをボーッと眺める。

空が青い。

まだ寝てるニノミヤを起こさないように、ソッとベッドを出てその大きな窓を開けると

ザザーン...と波の音が聴こえた。

現実じゃないような感覚。

テラスに出て息を吸い込むと、頭が冴えて来る。

振り返ると、モゾモゾと布団が動いて寝癖だらけのニノミヤがむくっと起き上がった。

目元をゴシゴシ擦った彼は、自分の隣を見て「...あれ？」って首を傾げてる。

「...Aー...」

キョロキョロ辺りを見回して、やっとテラスにいる私を見付けた彼は「...いた...」ってフニャッと笑った。

「おはよ、カズ」
「んー...今何時？」
「お昼前」

テラスから部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。

「...マジで...ごめん、寝過ぎた...」
「私もさっき起きたよ」
「今日は何するんだっけ...」
「あえて何もしないってどう？」
「...え？」

私はボーッとしてるニノミヤに口付けた。