極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ3)

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283.デジャヴ。ページ3

口笛を吹いて濡れた髪をバスタオルでワシャワシャしながら、ニノミヤがリビングに戻って来た。

「夜に口笛吹いたら蛇が来るって言われなかった？」
「あー！うん、ばーちゃんに言われた」
「...ばーちゃん...」
「ばーちゃん」

ククッ、と笑ったニノミヤがローテーブルの前に座ったからちょうど出来上がってたご飯を運ぶ。

「親子丼！」
「卵、玉ねぎ、鶏肉、ご飯...親子丼しか浮かばなかった」
「風呂でオムライスになるかなーって考えてた」
「...あ、ホントだ。そっち方向もいけたね」

全く思い付かなかった。

親子丼！ってなった、すぐに。

お茶を一口飲んで、「いただきます」をした彼が親子丼を食べ始めた。

「ごめんねー、おばーちゃんが作るような物しか作れなくってー」
「ん？オレ親子丼、好きよ？」

片頬がプクッと膨れてるニノミヤが、隣に座った私をチラッと見る。

「ついでにAも、好きよ？」

またすぐに視線は丼に戻って、モグモグしてる。

「...ついで」

呟いた私の声に、ニノミヤがクフフッて笑った。

彼がテレビを観ながら親子丼を食べてる間、私は隣で読み掛けだった文庫本を読む。

ニノミヤにオススメされた物。
もう、オススメされた本を何冊読んだだろう。

それが増えてくのも、何だか嬉しい。
それだけ同じ感動を共有したんだなー、って思える。

「あ」

ニノミヤの声に、彼の方を見ると既に食べ終わってて

「相葉さんの店で買ったんだ」

ソファの傍らに置いてある紙袋を見て呟いた。

「うん。あ、ほら偶然会ったって日にね、お見立てしてくれたの」
「そうだったんだ。...あれ？まだ入ってる。靴？」

自分の方に紙袋を引き寄せて中を覗き込んだニノミヤが、「Aの？」って訊く。

「えっ！？あっ...あのね、えーっと...」

冷静になった今、ペアってどうなの！？と突然恥ずかしくなって来て

実はお揃いなんだよー！なんて言えなくて、アワアワする。

「え？何？」
「あっ、やっ...私の、ではあるんだけど...」
「どんなの買ったの？見ても良い？」
「あー...あのねー...」
「また踵のたっかいヤツなんでしょー？オレ、ちびっこだからヒヤヒヤしちゃう」

10センチヒールだと追い抜かれちゃうからねー、って笑ったニノミヤが紙袋から靴箱を出してパコッと開いた。

出て来たのは、もちろんさっき玄関でプレゼントした靴とソックリな物。

「あら？これはデジャヴ？」
「...かもしれないね」
「あらら？」

恥ずかしさで、まともにニノミヤを見れない。