極楽ハニー 9th【ars K.N】 (ページ17)

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294.名探偵。ページ17

「で、無事にセンパイが帰って来てくれたから、よし！旅行だ！って。思ったの。んで、決めたの」

なんて勝手。
それは勝手だぞ？って、思ってるんだけど

確かに思ってるんだけど、嬉しいよぉって気持ちで胸がはち切れそうで苦しい。

「ちなみに日程、ここね」

ニノミヤがスマホのカレンダーを見せて、数字を「ここからここ」って指でなぞる。

てっきり週末弾丸旅行なんだと思ってたら...

「...え？木金も含まれてるけど」
「知ってる？センパイ。社会人には『有給休暇』ってゆー働かずして金が貰える素晴らしい権利があんの」
「うん...あるねぇ」
「それを何故か日本人は遠慮して使わねぇの。でもオレ、そーゆーの気にしない。使っちゃう」

何だか得意気に顎を上げたニノミヤが「センパイの休み申請もちゃんとしといたから」って笑う。

「えっ！？」
「オレさぁ、交渉術に長けてんだよね。もう許可下りてるから」
「ホントに...？」
「うん。物わかりの良い上司で良かったよね！『婚前旅行かぁ？』なんて言われたから『それはセクハラギリギリアウトだぞっ』って叱っといた」

叱る...上司を...。

しかも何だ、そのフザけた叱り方。

「ちゃんと、下調べしときなよ？センパイ食い意地張ってるから、食いたいモンいっぱいあるでしょ！」
「...ん」
「ん？」
「...嬉しい...ありがと」
「おいおい、こんな所で可愛い顔すんな」

軽くパコンと頭を叩かれてもヘヘッて笑ってしまう。

きっと今なら何されたって怒らない。

買ったばかりのニットにカレー零されたって、笑ってられるわ。私。

「あ...でも私がもし旅行の日に予定あったらどうしたの？」
「そんなの無いって分かってたもん」
「どうして？」
「探り入れてたから」

探り？
入れられた覚えが無い。

「オレさぁ、カンナさんと遊ぶのってこの日だっけ？って聞いた事あったでしょ？」
「...うん、あった」
「で、センパイは『その日じゃなくって...』って正しい日を教えてくれたじゃない？」
「うん」
「その時オレは『あれ？でもこの週末も何かあるって言ってなかった？』って訊いたの」

...うん、確かに訊かれた。

「そしたらセンパイ『その週末は何も予定無いよ』って言ったから、センパイのスケジュールはオレの手に入ったワケ」
「...こわっ！」
「ンフフ。オレ、探偵さんになれる？」
「...転職もありかもね」
「頭脳は大人、見た目は永遠のセブンティーン」

隣に座る名探偵カズは、やっぱり得意気に顎を上げた。